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2026年10月号掲載

顔面解剖学と組織老化のダイナミズムを 解き明かす包括的ガイドブック

【PR】領域横断的に視野が広がる すべての歯科医師に推薦したい至高の1冊

※本記事は、「新聞クイント 2026年10月号」より抜粋して掲載。

 小社2026 年8 月の新刊として『顔の解剖・加齢変化から考える フェイシャルアーキテクチャー ボツリヌス・ヒアルロン酸療法の基礎と臨床』が刊行されました。本欄では、本書の読みどころについて山内健介氏に語っていただきました。( 編集部)

境界領域を超えて口腔顎顔面を再考する、重厚なる解剖学・臨床手技の決定版

 「顔面美」や「顔の若返り」を扱う領域は、一見すると従来の歯科臨床や疾患治療とは一線を画す美容医学の世界に思えるかもしれない。本書『顔の解剖・加齢変化から考えるフェイシャルアーキテクチャー ボツリヌス・ヒアルロン酸療法の基礎と臨床』(原著『Facial Architecture』)は、まさに「医科と歯科」、「治療と美容」という二項対立の垣根を軽やかに越え、顔面全体の解剖学的・機能的調和を追求した圧巻の大著であると実感するだろう。

歯科医師の知見が結晶化した「顔面構造学(フェイシャルアーキテクチャー)」

 本書を手にしてまず注目すべきは、著者の大部分がブラジル・サンパウロ州立大学歯学部出身の歯科医師および口腔顎顔面外科・外傷学を専門とする臨床家によって占められている点である。ブラジルは世界的にみても歯科分野における顔面審美・機能再建の発展がきわめて目覚ましい国として知られるが、本書には同国のトップランナーたちが培ってきた緻密な知見が惜しみなく凝縮されている。

 本書は単なる「見た目を整える美容注射」の解説書とは一線を画するものである。口腔顎顔面外傷や疾患治療を背景にもつ執筆陣だからこそ、外傷後の瘢痕に対する皮下切離術(サブシジョン)など、病態改善や組織再建を目的とした機能的アプローチも含包されている。機能と審美は不可分であるという歯科医学の根幹をなす思想が、顔面組織全体へと網羅的に広げられている点に、本書の特徴がある。

組織学から加齢機序まで:カラーイラストと写真で紐解く系統的解剖

 全384 ページという圧倒的なボリュームを誇る本書の核となるのは、きわめて系統立てられた解剖学および組織学の記述である。皮膚・皮下組織・筋膜・筋肉・靭帯から、下地となる頭蓋顔面骨に至るまで、階層ごとの組織特性が精緻なカラーイラストとともに示されている。

 特に秀逸なのは、単なる静止画としての構造解説にとどまらず、「顔面の加齢(エイジング)」にともなう骨吸収、脂肪組織の移動・減少といった動的な機序(メカニズム)を論理的に明示している点だ。なぜ特定の部位にシワやたるみが生じるのか、その解剖学的背景を正しく評価したうえで施術を組み立てるプロセスは、口腔内の解剖と咬合を考慮しながら補綴設計を行う歯科医師の臨床思考ときわめて高い親和性をもつと考えられる。

麻酔学・薬理学・全身的影響:徹底された安全性の追求

 実務・手技の解説においても、その内容は誠実かつ徹底している。施術の起点となる局所麻酔においては、効果的な痛みのコントロールにとどまらず、注入時に回避すべき神経・血管の走行といった解剖学的注意点、麻酔薬の薬物動態や適正投与量に至るまで詳細に言及されている。

 さらに、ボツリヌス毒素製剤を扱ううえで避けて通れない毒性や全身的影響、ヒアルロン酸注入における血管塞栓をはじめとする偶発症のリスク管理についても、安全性を最優先にした網羅的な情報が提示されている。解剖学的な根拠に基づいたリスク回避策とトラブルシューティングの知識は、顔面領域を扱うあらゆる医療従事者にとって必読の価値がある。

医科・歯科の緊密な連携による精密な翻訳と日本臨床への配慮

 海外発の専門書を臨床に取り入れる際、つねに懸念されるのが「訳語の精度」と「国内法制・薬事環境の相違」である。しかし本書においては、その配慮も万全である。翻訳は医師および歯科医師(口腔外科医)の手によって行われており、専門用語の厳密さはもとより、現場の臨床感覚に沿った日本語へと昇華されている。装丁の質感と相まって、学術書・臨床書としての完成度はきわめて高い。

 また、ブラジルと日本の薬事制度や使用可能な製剤・適応の違いについても、冒頭に日本の医療状況に関する記載があり、さらに解説コラムが随所に追記されている。この配慮により、海外の先進的な知見を学びつつも、日本の日常臨床へ即座に落とし込める実践的な構成となっている。

歯科医師の日常臨床と思考の幅を広げる1冊

 本書は、一見すると特定の専門手技に関する専門書に見えるが、その本質は「顔面解剖学と組織老化のダイナミズムを解き明かす包括的ガイドブック」である。

 補綴装置による口唇のサポート、顎関節症や食いしばりへのアプローチ、あるいは口唇周囲の加齢変化・フレイルへの対応など、現代の歯科臨床が扱う領域は「歯」そのものから「口腔顎顔面」へと広がり続けている。顔面全体の構造的調和を理解することは、日常の歯科臨床における診断力・治療計画の精度を一段と高める強力な武器となるだろう。「医科と歯科」、「医療と美容」のボーダーを軽やかに横断し、臨床家としての視野を広げたいと願うすべての歯科医師に推薦したい至高の1冊といえる。

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