2013年6月6日掲載
約2,500名の参加者を集め盛大に開催
第11回 International Symposium on PERIODONTICS RESTORATIVE DENTISTRY
さる6月6日(木)から9日(日)の4日間、BOSTON MARRIOTT COPLEY PLACE(米国)にて、第11回 International Symposium on PERIODONTICS RESTORATIVE DENTISTRY(The Quintessence International Publishing Group主催)が、約2,500名の参加者を集め開催された。
今回のシンポジウムで数多く語られたテーマとしては、ティッシュエンジニアリング、抜歯後即時インプラント埋入および即時荷重、デジタルデンティストリーの3点が挙げられる。
インプラント治療に関連したティッシュエンジニアリングについては、ナイフエッジ状に吸収した歯槽堤に対しBio-Gideを用いて水平的に大幅な骨造成を行う術式を提示したDr. István Urbán(ハンガリー・ブタペスト開業)の講演が聴衆の高い関心を集めるなど、一部の演者により新たな骨造成の手法が紹介された。しかしながら全体としては、ある特定の治療法や骨補填材料、成長因子の有効性がトピックとして語られるわけではなく、これまで集積されたデータをもとに、患者の状態に応じていかに最適なサイトディベロップメントを選択し、インプラント埋入側の条件を整えるか、といった堅実なテーマが多くを占めた。
たとえば、Dr. Christoph H. F. Haemmerle(スイス・チューリッヒ大教授)、Dr. Maurício G. Araújo(ブラジル・マリンガ開業)、Dr. Ueli Grunder(スイス・チューリッヒ開業)ら複数の演者がリッジプリザベーションを題材とした講演を行ったが、彼らはこの術式をGBRやベニアグラフトなどよりもすぐれたものとして無批判に推奨するわけではなく、これまでの研究で得られた臨床的・解剖学的な知見をもとに、大規模な造成手術を考える前に適材適所で応用するための一選択肢として、すなわちより患者の負担を考慮した治療計画立案を行うための術式として、情報を提供していた。また、抜歯後即時埋入・即時荷重に関するセッションにおいても、利点・欠点の把握、より慎重な適応症選択の重要性が強調された。
一方、デジタルデンティストリーについては、CAD/CAM、コンピュータシミュレーション、光学印象などのテクノロジーの現在地点および次世代の技術に関する展望が述べられ、今後の伸びしろを感じさせる講演が行われた。
また、天然歯の保存に関するセッションは比較的数が少なかったが、たとえば異なった生体材料を用いてルートカバレージを行った症例の予後が比較されるなど、一部の演者によりこれまでの歩みを総括する講演が行われた。さらに、インプラント周囲炎、インプラント補綴のトラブル、歯周罹患者へのインプラント治療など、慎重な治療計画立案やメインテナンス履行の重要性を再確認する演題も複数見られた。
なお、今回のシンポジウムでは、佐々木猛氏(大阪府開業)が歯周疾患症例に対する包括的治療の長期的な予知性について、山本敦彦氏(大阪府開業)がインプラント周囲炎に対してEr:YAGレーザーを用いた治療法についてそれぞれ講演を行い、聴衆の関心を引いたほか、ポスターセッションに参加した吉野敏明氏(神奈川県開業)、牧草一人氏(京都府開業)がともにその内容を高く評価されアワードを受賞するなど、日本人の活躍も目立った。
インプラント治療やティッシュエンジニアリングの技術が一定の成熟期を向かえた今、今後は集積された知見と技術をいかに有効に用いて的確な治療計画を立案し、予知性の高い治療を実現させていくかが焦点となることを実感できるシンポジウムとなった。