2014年12月6日掲載
日本補綴歯科学会、「第1回臨床歯科臨床研鑽会 プロソ’14 ―審美歯科臨床のカッティングエッジ―」を開催
さる12月6日(土)、7日(日)の両日、東京医科歯科大学 鈴木章夫記念講堂(東京都)において、「第1回臨床歯科臨床研鑽会 プロソ’14 ―審美歯科臨床のカッティングエッジ―」(日本補綴歯科学会主催、矢谷博文理事長、水口俊介大会長)が開催された。このたび、日本補綴歯科学会が初の試みとして開催した本会は、進化する審美歯科臨床の学術面からのサポートや、そのエビデンスの共有などを目的に企画されたもの。これまでの同学会の学術大会や支部会とは異なる趣の、審美歯科補綴の臨床に特化した内容となっていた。以下に、その概要を示す。
1)シンポジウム1 審美補綴のための補綴前処置 ―アタッチメントレベルの管理、歯頚線の調和―(窪木拓男座長〔岡山大大学院医歯薬学総合研究科 インプラント再生補綴学分野〕、鈴木秀典座長〔関西支部〕)
本シンポジウムでは、「審美歯科治療の現状と治療のエンドポイント」と題して石田悠一氏(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部口腔顎顔面補綴学分野)が、「審美性を獲得するための補綴前処置」と題して佐藤洋平氏(鶴見大歯学部有床義歯補綴学分野)が、「歯頚線の位置を変えないためにすべきこと、歯頚線の位置を変えるために出来ること」と題して脇 智典氏(東京都開業、阪大大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座クラウンブリッジ補綴学分野)、そして「補綴前の硬組織および軟組織のマネージメント」と題して宮前守寛氏(大阪府開業)がそれぞれ登壇。審美的な治療結果を獲得し、かつ長期にわたって維持するためのガイドラインの解説や、アタッチメントレベルや歯頚線のコントロールにかかわる各種外科術式の解説とその実際が主な内容であった。
2)シンポジウム2 欠損部歯槽堤の保存、再建(結合組織移植を含む)(細川隆司座長〔九歯大歯学部口腔機能学講座口腔再建リハビリテーション学分野、鮎川保則座長〔九大大学院歯学研究院口腔機能修復学講座インプラント・義歯補綴学分野〕〕
本シンポジウムでは、「審美修復におけるポンティックとそれに関連する歯槽堤の形態について」と題して木林博之氏(京都府開業)が、「修復治療のための歯槽堤増大」と題して山崎章弘氏(山口県開業)が、「エビデンスに基づいた欠損部顎堤の保存、再建のストラテジー」と題して正木千尋氏(九歯大口腔再建リハビリテーション学分野、阪大大学院歯学研究科顎口腔機能再建学分野クラウンブリッジ補綴学分野)が、そして「欠損部歯槽堤の再建に対する硬組織、軟組織のマネージメント」と題して松井徳雄氏(医療法人貴和会歯周病インプラントセンター)がそれぞれ登壇。ポンティックサイト、インプラントサイトいずれにとっても重要となる歯槽堤の増大につき、さまざまな角度からの検討がなされた。
3)シンポジウム3 クラウンカントゥア、フィニッシュラインの設定とブラックトライアングルの処理(インプラント治療を含む)(澤瀬 隆座長〔長崎大大学院医歯薬学総合研究科口腔インプラント学分野〕、佐藤洋平座長〔前述〕)
2日目の冒頭に行われた本シンポジウムでは、まず「歯周組織の安定を目指して」と題して六人部慶彦氏(大阪府開業)が、「審美性を考慮したインプラント上部構造の設計」と題して松永興昌氏(福岡県開業)が、そしてラボサイドにおけるクラウンカントゥアへの対応 歯頚線と歯間乳頭への配慮」と題して伊原啓祐氏(歯科技工士・鶴見大歯学部歯科技工研修科)がそれぞれ登壇。前日の外科処置にフォーカスを当てた内容に対し、本シンポジウムでは補綴装置の形態が歯頚線やブラックトライアングルに与える影響といった内容が主であった。中でも、プロビジョナルレストレーションを用いた歯頚線のコントロールが大きな話題となっていた。
4)シンポジウム4 CAD/CAMを用いた審美材料と技工技術の進歩(萩原芳幸座長〔日大歯学部歯科補綴学第3講座〕、前川賢治座長〔岡山大大学院医歯薬学総合研究科インプラント再生補綴学分野〕
本シンポジウムでは、「Digital Dentistryの現状と未来 ―補綴材料の選択、補綴設計および最新技術について―」と題して大谷恭史氏(米国ワシントン州開業)が、「Zirconiaは従来法を超えているのか?」と題して土屋嘉都彦氏(土屋デンタルクリニック)が、「審美部位における単独歯および少数歯欠損 インプラント補綴へのデジタル応用戦略」と題して丸尾勝一郎氏(神歯大顎咬合機能回復補綴医学講座)が、「無歯顎患者におけるデジタルデンティストリー ―ボーンアンカードブリッジとインプラントオーバーデンチャー症例から―」と題して田中晋平氏(昭和大歯科補綴学講座)が、そして最後に「CAD/CAMの臨床現場と変革」と題して西村好美氏(歯科技工士・デンタルクリエーションアート)がそれぞれ登壇。前半の大谷、土屋、丸尾氏はいずれも米国内で教育を受けてきた経歴をもち、その視点から多くの論文を基にCAD/CAM、セラミック材料の現状と可能性について述べた。また、田中氏はとくにロングスパンの症例においてはミリング後のシンタリングにともなう収縮が避けられないジルコニアよりも、チタンを選択するほうが精度的には有利であるとし、その実例を示した。また、西村氏は歯科技工士の立場から現在のCAD/CAMシステムの全体像を示しつつ、機械化が進むこれからの時代にはますます歯科技工士の質が問われる時代となる、と講演を締めくくった。
審美補綴治療の「土台」となる歯周組織への配慮から、審美的な補綴装置製作のための知識までが幅広く、かつ濃密に語られた今回の研鑽会。日本補綴歯科学会として、この研鑽会というスタイルを今後どのように継続していくのかが注目される。