社会|2025年6月11日掲載

16名の講師がカリオロジーについて多角的に考察

Cariology Party開催

Cariology Party開催

 さる6月7日(土)、日本橋ホール(東京都)において、「Cariology Party~う蝕学の“いま”を総力考察~」(WHITE CROSS株式会社主催)が開催され、約150名が参集した。当日は16名の講師が登壇し、カリオロジーに関する7つのテーマについて取り上げた。

テーマ1:診査・診断
演者:仲川隆之氏(長野県開業)、堀川大樹氏(鹿児島県勤務)
 従来はう窩の有無で治療選択されていたう蝕であるが、活動性も治療の意思決定にかかわると強調。現在スタンダードとされているう蝕治療のディシジョンツリーに則った治療選択について示したうえで、活動性を評価し、非切削治療によりう蝕の進行停止を図ることが重要だと述べた。

テーマ2:食習慣
演者:新美寿英氏(静岡県開業)、山田 翔氏(愛知県開業)
 う蝕予防を目的として単に「甘いものを控えるように」と患者に伝えるだけでは不十分であり、何をどのように制限するか具体的に示す必要があると問題提起。糖質の分類を提示したうえで、特に制限すべき遊離糖に関する現状と、これらを避けるためのアドバイスについて紹介した。

テーマ3:フッ化物
演者:石塚洋一氏(東京歯科大学衛生学講座准教授)、森 寛子氏(歯科衛生士、WHITE CROSS編集部)
 フッ化物によるう蝕予防のメカニズムについて振り返るとともに、フッ化物応用においては製品だけでなく、使用方法まで含めて患者に指導することが重要であると主張。フッ化物配合歯磨剤、フッ化物洗口、フッ化物歯面塗布のそれぞれについて、最新情報をふまえて使い方のポイントや注意点を示した。

テーマ4:接着修復
演者:品川淳一氏(東京都開業)、竹内一貴氏(香川県開業)
 「Repeated Restoration Cycle」を完成させないこと、最小限の介入によって歯の寿命を延ばす重要性についてあらためて強調。自身が行っている接着修復の実際について症例を交えて詳説するとともに、「接着は経年的に劣化する」「修復は一生ものではない」「安易に抜髄しない」といった点にも言及した。

テーマ5:小児
演者:有田光太郎氏(長崎県開業)、佐藤 涼氏(岡山県勤務)、川崎さをり氏(歯科衛生士、祥南歯科・矯正歯科医院)
 乳児における味覚形成のエビデンスや、母乳と哺乳瓶の違いについて整理し、保護者へ伝えるべきポイントをまとめた。さらに、エナメル質形成不全症(MIH)はその特徴からう蝕のトリガーになりうること、痛みによって清掃困難となりやすいことから注意・配慮が必要であると指摘した。

テーマ6:高齢者
演者:吉武 秀氏(神奈川県勤務)、松田法子氏(歯科衛生士、いまにし歯科医院)
 根面う蝕に焦点を当て、病因論や診断と評価、非侵襲的アプローチ、侵襲的アプローチについて解説。特に高齢者や認知症患者においてはプロフェッショナルケアの比重がより大きくなるということで、エビデンスをふまえたオリジナルのディシジョンツリーに沿った治療選択についても明示した。

テーマ7:行動変容
演者:宮城和彦氏(静岡県開業)、濱﨑あゆみ氏(歯科衛生士、栗林歯科医院丸の内)、平澤一美氏(歯科衛生士、坂田歯科医院)
 イノベーション普及理論や行動変容ステージモデルについて概説したうえで、患者がどのステージにいるかで与えられる資源が変わること、自己効力感を高めるアプローチがもっとも有望であることを示した。さらに、歯科衛生士として自身が日頃から実践している声かけや質問の具体例も披露した。

 タイトルどおり、う蝕学の“いま”についてとことん掘り下げられた本会。わずか2時間で注目すべき情報が次々と提供され、多くの参加者が終始釘づけになっていた。

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