学会|2025年6月13日掲載

「今求められている矯正治療とは? 治療の質向上を目指して」をテーマに

第33回日本成人矯正歯科学会大会開催

第33回日本成人矯正歯科学会大会開催

 さる6月12日(木)、KABUTO ONE HALL & CONFERENCE(東京都)において、第33回日本成人矯正歯科学会大会(今村隆一大会長、鈴木敏正理事長)が、「今求められている矯正治療とは? 治療の質向上を目指して」をテーマに開催された。今村氏は現況を「矯正歯科に関する情報が氾濫し、それに患者が振り回され適切な矯正歯科治療にたどりつけない“矯正難民”となっている」とたとえ、最善および最新の矯正歯科治療を提供すべく今回のプログラムを構成した旨を述べた。

 プログラムは国内基調講演・シンポジウム・市民公開講座が各1題、海外企画講演・一般口演・ランチョンセミナーが各2題、国内依頼講演が3題、コ・デンタル講演・テーブルクリニックが各4題のほか、症例展示、学術ポスター展示、認定試験などが行われた。

 そのうち国内依頼講演1では、浜中 僚氏(長崎大学)が「AIによる矯正歯科診療の進化― 診断・治療計画の高度化と効率化」と題して登壇した。氏はこれまでの人工知能(AI)開発の歴史および昨今話題のディープラーニングおよび大規模言語モデル(LLM)について解説し、これまでも現在もAIに対する社会の期待は大きいものの、現実の複雑さに対し何度も挫折してきた技術であって今も開発途上にあること、単純作業にかかる時間を削減し他の作業ができるメリットはあるが、いまだ万能でもいつも正しい答えを出すわけでもないことに留意が必要であるとまとめた。

 また、国内基調講演では三谷秀夫氏(東北大学)が「咬合機能に関わる顔面頭蓋のバイオメカニズム」と題して登壇し、筋をはじめとした軟組織や、顎関節を含めた下顎骨の成長が歯列や咬合、咀嚼に及ぼす影響について解説した。1977年から2003年の長きにわたり同大学にて教鞭をとってきた氏は、「矯正歯科治療は単に技工的な治療ではなく、生物学的な治療である」とし、成長のダイナミズムや顎顔面構造のバイオメカニクスから矯正歯科治療を考える必要性を強調した。

 その他、カリエールモーション装置開発者のLuis Carriere氏(スペイン開業)による「Adult Severe Class III Treatment with the Carriere Motion Appliance: An Efficient Alternative to Surgery(成人の重度III級治療におけるカリエールモーション装置の活用:外科的矯正治療に代わる効率的な治療法)」、Thikriat Al-Jewair氏(米国・ニューヨーク州立大学バッファロー校)による「Evidence-Based Approaches to Managing Anterior Open Bites in Adults(成人の前歯部開咬に対するエビデンスに基づいたマネジメントアプローチ)」、Stephen Warunek氏(同校)による「Direct Printed Aligners: A Comparison with Conventional Thermoformed(ダイレクトプリントアライナー:従来の熱成形アライナーとの比較)」、Yi-Sheng Lee氏(台湾矯正歯科学会副会長)による「Risk and Limitation in Adult Orthodontics(成人矯正治療におけるリスクと限界)」、Un-bong Baik氏(韓国開業)による「Molar protraction & Impacted 3rd molar(大臼歯の牽引および埋伏第三大臼歯)」と国際色豊かなプログラムが用意され、聴衆らの耳目を集めていた。

 次回の本学術大会は、きたる2026年6月4日(木)に神戸国際会議場(兵庫県)にて開催予定である。

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