学会|2025年6月17日掲載

「2035年までに実現すべき歯科保健医療政策」をテーマに

第10回社会歯科学会総会・学術大会開催

第10回社会歯科学会総会・学術大会開催

 さる6月14日(土)、15日(日)の両日、北海道歯科医師会館(北海道)において、第10回社会歯科学会総会・学術大会(秋野憲一実行委員長、山田 尚大会長、小玉 剛理事長/札幌歯科医師会、日本障害者歯科学会、日本老年歯科医学会共催)が「2035年までに実現すべき歯科保健医療政策」をテーマに開催され、100名以上が参集した。本学会は、歯科界を取り巻く諸事情の実態を把握・分析し、問題解決に向けた提言を行う学会として、歯科医師会・大学・行政の歯科関係者を中心に活動している。

 1日目は、平田創一郎氏(社会歯科学会常任理事、東京歯科大学)による司会進行のもと、大会長の山田氏(札幌歯科医師会会長)による開会の辞、理事長の小玉氏(東京都東久留米市歯科医師会会長)による挨拶の後、小嶺祐子氏(厚生労働省医政局歯科保健課長)による基調講演「歯科保健医療の現状と課題」が行われた。

 小嶺氏は講演のなかで、27年ぶりに改訂された「地方公共団体における歯科保健医療業務指針」や昨年度からスタートした第8次医療計画などに言及。歯科医療提供体制の構築に向けて、行政と連携して地域の状況にあわせた歯科保健医療施策の体制づくりの重要性を訴えた。

 続いて、日本障害者歯科学会との共催企画としてシンポジウム1「2035年までに実現すべき障害者歯科保健医療政策」が行われた。尾崎哲則氏(社会歯科学会副理事長、日本大学)と秋野氏(同学会常任理事、札幌市保健福祉局)による座長のもと、弘中祥司氏(日本障害者歯科学会理事)、針谷宣宗氏(札幌歯科医師会理事)、岡本佳明氏(広島県開業)、髙井理人氏(生涯医療クリニックさっぽろ歯科科長)が登壇。それぞれの立場から障害者や医療的ケア児らに対する現状と課題が挙げられ、歯科医療提供体制の取り組みや解決策などが議論された。

 2日目は、会員による一般口演4題が行われたのち、小玉氏による座長のもと、比嘉奈津美氏(歯科医師、参議院議員)による講演「豊かな歯科界実現‼」が行われた。比嘉氏は、職域代表として国政の場での取り組みを披露するとともに、さる6月13日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針)の歯科の内容についてもふれた。また、政府や関係省庁と交渉するための根拠となるデータの共有など、さらなる連携や協力を訴えた。

 引き続き、日本老年歯科医学会との共催企画としてシンポジウム2「2035年までに実現すべき高齢者歯科保健医療政策」が行われた。遠藤浩正氏(社会歯科学会副理事長、明海大学)と秋野氏による座長のもと、阪口英夫氏(日本老年歯科医学会理事)、高田 靖氏(東京都豊島区歯科医師会会長)、渡邊 裕氏(北海道大学歯学部高齢者歯科学講座)が登壇。

 阪口氏は日本老年歯科医学会の立場から、口腔機能低下症の普及や口腔機能に関する啓発活動などへの取り組みについて紹介したほか、介護保険を担当する唯一の学会として令和9年度の介護保険改正に向けた対応や認知症対策、病院歯科の充実などにもふれた。高田氏は豊島区口腔保健センターの取り組みを紹介。2035年に向けた高齢者歯科保健医療政策に必要な方向性の1つとして、歯科医師会の「Association」から「Corporation」へのシフトを強調した。渡邊氏は、歯を残すことによって誤嚥性肺炎のリスクが高まるデータなどを供覧し、口腔衛生管理や口腔機能管理の連携の主役は歯科衛生士であると強調。また、在宅や病院、介護施設などに歯科衛生士を適切に配置していく必要性についても述べた。

 最後に、秋野氏による挨拶と小玉氏による閉会の辞で本大会は盛会裏に閉幕した。

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