学会|2025年12月8日掲載

「時代のニーズに応える歯科衛生学教育を考える インターフェイスの視点より」をテーマに

第16回日本歯科衛生教育学会総会・学術大会が開催

第16回日本歯科衛生教育学会総会・学術大会が開催

 さる12月6日(土)、7日(日)の両日、 静岡県立大学短期大学部小鹿キャンパス(静岡県)において、第16回日本歯科衛生教育学会総会・学術大会(野口有紀大会長、 畠中能子理事長)が、「時代のニーズに応える歯科衛生学教育を考える インターフェイスの視点より」をメインテーマに開催され、349名の歯科衛生士、 歯科医師などの歯科衛生士教育関係者が参集した。

 野口氏の座長のもと、 教育講演I「今後の歯科衛生教育:ビッグデータと学際的アプローチが拓く口腔と全身の健康への貢献」と題し、 演者の小坂 健氏(東北大学大学院歯学研究科研究科長)が、 東日本大震災やCOVID-19流行時の教育体制についてを中心に、 豊富な経験に基づいて講演した。歯科衛生士教育は、 臨床現場で求められる役割の拡大にともない、 「患者中心の医療」を目指すための学習量や内容といった、 提供側の理論ばかりが論点になってしまいがちである。しかし、教育者として、教育の本来の当事者である「学ぶ人中心の教育」を目指すべきで、一方的な提供側の立場でなく、学ぶ人とつくりあげていくべきであるとした。

 続いて教育講演IIとして、座長の犬飼順子氏(愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授)のもと、演者の相田 潤氏(東京科学大学大学院医歯学総合研究科歯科公衆衛生学分野教授)が「データに基づく今知っておくべき科学的知見」を講演した。まず「変わる歯科疾患の定義」として、近年WHOやランセットといった影響力の大きな団体や媒体で、歯科・口腔疾患の重要性と全身の健康への影響が発信されるようになった。さらに一般にも「日本人のう蝕の減少」、「口腔ケアと肺炎」、「歯周病」、「フッ素」、「加熱式たばこ」など数々の歯科関連の膨大な情報が注目されている。このような情報からいくつかピックアップして、演者が数々の文献や調査結果での絶対数と相対数のデータをグラフ化して比較し、実際は広く知られた認識が正しいとは限らないことを提示した。歯科医療者側として、一般に広く知られている認識を鵜吞みにすることのリスクを示し、教育者として批判的視点でデータをみる力を育んでいくことの重要性を強調した。

 その他2つのシンポジウムで、 これからの歯科衛生士教育について、 幅広い領域から演者を集め、国内の団体や大学、海外での取り組みや、「歯科衛生学教育モデル・コア・カリキュラム」について、文部科学省、厚生労働省といった行政の立場からも講演された。国民や医療関連の職種からも、 歯科衛生士には今後より幅広い役割が期待されていることとともに、教育者側としてより専門性の高い人材を育む責任と、大きな期待が寄せられていることが示された。

 次回は、きたる2026年11月21日(土)、22日(日)の両日、 目白大学短期大学部新宿キャンパス(東京都)において、 中野恵美子大会長(目白大学短期大学部歯科衛生学科教授)のもと開催予定である。

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