学会|2025年12月9日掲載
アジア各地からの参加者も多数みられ、盛会となる
有床義歯学会、下顎吸着義歯ワールドミーティングおよび学会発足10周年記念学術大会を開催
さる12月6日(土)、7日(日)の両日、コングレスクエア日本橋(東京都)において、下顎吸着義歯ワールドミーティングおよび有床義歯学会発足10周年記念学術大会(有床義歯学会主催、山崎史晃会長)が相次いで開催された。
阿部二郎氏(有床義歯学会名誉会長、東京都開業)により設立されたスタディグループ「JDA」を原点に、「下顎総義歯吸着理論」で世界に通じる学会となって以来10年。会場には以下に示す各国からの演者のほか、アジア各地からの参加者も多数みられ、盛会となっていた。
初日の下顎吸着義歯ワールドミーティングでは、山崎会長と阿部名誉会長の挨拶に引き続き、6名の演者が登壇。李 江滨氏(中国)、林 小凱氏(歯科技工士、台湾)、Kelvin Khng氏(シンガポール)、Kawantae Noh氏韓国)、Jonathan Shen 氏台湾)、Cindy Ooi 氏(マレーシア)がそれぞれの立場から下顎総義歯吸着理論(Suction Effective Mandibular Complete Denture:SEMCD)の理論と実践について語った。
翌日には「10年の歩み、未来への一歩」をテーマに学術大会が開催され、約250名が参集した。最初に「問題解決のために必要な下顎総義歯のアウトライン」と題して講演を行った松丸悠一氏東京都開業)は、下顎吸着総義歯のポイントとして、特に舌下部・舌小帯部・前顎舌骨筋窩について解説した。
「義歯治療と口腔機能低下症とリハビリテーション」と題して講演を行った鈴木宏樹氏(福岡県勤務)は、「食べるためには歯の数や噛み合わせも大事だが、それらと同様に口腔機能も重要である」とし、口腔機能低下症および各症状を改善させるためのリハビリテーションについて解説した。
「デジタル技術を利用したデンチャー製作を考える」と題して講演を行った今田裕也氏(歯科技工士、協和デンタル・ラボラトリー)は、歯科技工士の高齢化と人手不足が進むなか、デジタルによる効率化を考える必要があるとし、自社のデジタルデンチャーへの取り組みを紹介した。
「下顎前方変位を伴うClass III無歯顎症例」と題して講演を行った安達隆帆氏(山形県開業)は、咬合高径低下、不良な対顎関係、下顎顎堤吸収をともなうClass III症例に対する総義歯治療について、予後も含めて解説。総義歯治療においても定期的な検診と調整が重要であると述べた。
「クラウンコンビネーションのケースを円滑に進めるための取り組み」と題して講演を行った桑名勇至氏(歯科技工士、入れ歯の技工所 おり鶴)は、パーシャルデンチャー製作におけるクラウンワークとのコンビネーションについて、症例をベースに解説した。
「下顎吸着総義歯とレトロモラーパッド」と題して講演を行った市川正人氏(福井県開業)は、下顎吸着総義歯においては舌下部とレトロモラーパッドが2大ウィークポイントであるとしたうえで、レトロモラーパッドに対する注意点をさまざまな視点から解説した。
「下顎吸着総義歯の印象法ベーシック&アドバンス―適切な検査・診断が導く印象法の実践―」と題して講演を行った永田一樹氏(山形県開業)と野澤康二氏(歯科技工士、シンワ歯研)は、阿部氏が考案した下顎総義歯の検査項目を用いて吸着阻害因子を事前に確認したうえで治療を始めることが重要であると解説。そのうえで、概形印象採得、個人トレー製作、精密印象採得について、それぞれのポイントを解説した。
講演終了後は、山崎氏と阿部氏による総括が行われ閉会となった。来年はパシフィコ横浜(神奈川県)において、日本臨床歯科CADCAM学会と合同開催になることも発表された。