社会|2026年6月30日掲載
「観察に基づく過不足のない診療」「力に対する生体反応」などをテーマに講演が行われる
2026年第45回臨床歯科を語る会が開催
さる6月26日(金)から28日(日)の3日間、リンクフォレスト(東京都)において、2026年第45回臨床歯科を語る会(斎田寛之実行委員長)が開催された。本会は歯科臨床の研鑚を目的に1981年に発足し、1年に一度、全国各地のスタディグループが一堂に会して、歯科におけるさまざまな分野についてディスカッションを行う会である。
27日(土)の全体会では、千葉英史氏(千葉県開業)が「観察に基づく過不足のない診療をめざして」と題して講演を行った。千葉氏はまず症例を供覧したうえで、過不足のない診療について、個体差、個人差を診て、患者の過去(罹患度)、現在(進行性)、未来(回復力)を把握および予測し、“必要最小限”を意識して治療方針を決定していくことが重要と述べた。また、臨床観察について、故・金子一芳氏からの教えである診査(頭の整理)、診断(治療計画)の重要性を語り、診査の1つであるデンタルエックス線写真については、透過像だけでなく、不透過像を見ることの大切さも強調した。最後には25年以上の長期経過症例を複数供覧したうえで、謙虚に学び続け、これまでのみずからの臨床を記録・振り返り、考察し続ける姿勢が重要だと締めくくった。
分科会では「歯髄保存の適応症と限界」「少数歯欠損症例における治療戦略」「重度歯周炎(Stage Ⅳ)を伴う咬合崩壊症例への対応」の3つに分かれ、参加者はそれぞれ興味のあるセッションに参加した。特に「少数歯欠損症例における治療戦略」では、その対応として、自家歯牙移植、接着ブリッジ、コーヌステレスコープ、インプラント、遊離端欠損における短縮歯列の選択、という各アプローチの立場から、市野英昭氏(愛知県開業、しんせん組)、大谷一紀氏(東京都開業)、熊谷真一氏(静岡県開業、包括歯科医療研究会)、鷹岡竜一氏(東京都開業、火曜会)、壬生秀明氏(東京都開業、救歯会)らが登壇した。セッションの最後には、三箇 満氏(新潟県開業、NDの会)が若年者の先天性欠如歯の症例を供覧。各演者とともにその対応についてディスカッションが行われ、会場は大いに盛り上がった。
その他、27日(土)には登坂祐介氏(新潟県開業、LMN)、山本哲史氏(広島県開業、北九州歯学研究会、Hiroshima STYLE)、江尻健一郎氏(東京都開業、火曜会)、星野修平氏 (東京都開業、歯考会)による会員発表、26日(金)、27日(土)の夜には本会恒例の「夜の部屋」として、「若手症例相談の部屋」「医療と医業のはざま」などが行われた。
28日(日)の全体会「井上孝先生に聞く、力に対する生体反応の真実~天然歯・インプラントにまつわる臨床仮説~『骨の吸収と増生の舞台裏』」では、森本達也氏(静岡県開業、包括歯科医療研究会)、武田孝之氏(東京都開業)らに加えて、井上 孝氏(東京歯科大学名誉教授)を講師に招聘し講演が行われた。森本氏はこれまでの自身の症例統計を基に力の影響と骨の変化について発表し、武田氏はインプラント・骨界面に起こる力の影響について発表を行った。それらを受けるようにして、井上氏は骨の吸収と増生や、顎骨の硬化性骨髄炎とインプラントの関係性などを解説した。前者について井上氏は、組織の正常(常態)と異常(病態)の境界線、炎症の概要、組織再生の三要素(細胞、足場、成長因子)を話したうえで、骨吸収は咬合力に細菌因子や免疫因子が加わることにより、RANKLを誘発する経路が活性化し、破骨細胞が誘導されて骨が吸収されると述べた。一方、骨増生は咬合力によって生じる骨細胞の直接的な骨形成、あるいは幹細胞の分化による骨形成の主に2つの異なるプロセスよって生じると解説した。全体会の最後にはディスカッションが行われ、盛会のうちに幕を閉じた。