2022年10月号掲載
患者さんの全身の健康とQOL向上に貢献する!
【PR】睡眠時無呼吸治療のきっかけをもっと歯科から促したい
※本記事は、「新聞クイント 2022年10月号」より抜粋して掲載。
本欄では、『歯科医師のための睡眠時無呼吸治療』をご執筆された宮地 舞先生(東京都勤務)に出版の経緯と概要はもちろん、日本における睡眠時無呼吸の現状や、歯科医師として睡眠時無呼吸治療に携わることの意義、思いなどについて語っていただきました。(編集部)
「ザ・クインテッセンス」誌の連載を大幅に改変し、書籍化!
――本書執筆のきっかけは?
山﨑長郎先生(日本臨床歯科学会理事長)に、御社の「ザ・クインテッセンス」編集部を紹介していただいたことがきっかけです。山﨑先生とは、歯科医師である私の父が学術関連で以前からお仕事をご一緒させていただいていて、その父を介して親交をもちました。そして、私がカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に留学し、同校で睡眠歯科を専攻したことで学術的な意見交換をさせていただくようになり、執筆をとおして「睡眠歯科を日本でもっと広めなさい!」と背中を押してくださいました。
「ザ・クインテッセンス」誌では最初に睡眠歯科に関するコラムを執筆し、その後特集論文、最終的には15回にわたり「はじめよう! 睡眠歯科」と題した閉塞性睡眠時無呼吸の歯科的対応に関する連載(2021年1月号〜2022年3月号)をもたせていただきました。今回の書籍は、その連載を再構成し、加筆したものです。
日本の成人男性の約4人に1人が睡眠時無呼吸に罹患!
――睡眠時無呼吸の歯科的対応とは?
睡眠時に口腔内装置を装着して、睡眠中の呼吸の改善を促す治療です。閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、その重症度と適用によって治療法が異なり、口腔内装置治療(OA治療)は軽症~中等症のOSA、もしくはCPAP治療を継続できなかった患者さんを受けもちます。
実は、日本におけるOSAの有病率は、たとえば成人男性であれば約4人に1人ともいわれており、この数字は糖尿病のそれよりも大きな割合です。しかし、多くの人はOSAへの罹患に気づいていなかったり、気づいていても治療していません。米国ではOSA罹患者の約80%がそのような潜在性あるいは未診断の状態にあり、このことにより運転中や仕事場での事故、労働生産性の低下、全身疾患との合併症が生じ、その経済的損失は何と約16兆円にもなると報告されています(本書1章で詳説)。日本の潜在性OSA有病者も米国と同等か、それ以上の割合で存在すると私は考えています。
――歯科は睡眠時無呼吸にどのようにかかわるのでしょうか?
OA治療は保険で受けられますが、その場合、最初に医科を受診し、その紹介で歯科を受診していただく必要があります。自費の場合は、歯科だけで治療を完結することもできますが、OSAはその重症度によって治療法が異なり、OA以外の治療が必要と判断したときは(本書3、4章で詳説)、医科に紹介します。私は保険、自費どちらの治療も行いますが、患者さんがそのいずれを選択しても、今後は睡眠時無呼吸治療を始めるきっかけをもっと歯科から促したいと考えています。なぜなら、OSAの治療にかかわろうとする歯科医師が日本ではまだ少ない一方で、歯科医師や歯科衛生士であれば、患者さんのお口の中を毎日みており、その視点を少し広げるだけで、OSAの簡単なスクリーニングができるからです(本書6章で詳説)。
ただし、スクリーニングには睡眠や呼吸の医学的な知識がある程度必要になり、実際に治療を行うならなおさらです。また、OA治療は歯科医療のなかでもいささか特殊で、医科歯科連携が必要不可欠ですが、その参考にできる書物は限られるのが現状でした。そこで本書では、睡眠歯科の基本的な知識と、OA治療のためのスクリーニング~術前検査~診断~治療計画~OA製作・装着・調整~評価~メインテナンスまでのすべてを解説しました。
――本書の特長は?
難しく書かないことを意識し、また写真や図表をふんだんに提示しましたので、手前味噌ですがわかりやすい本になったとは思います。ただし、いずれの歯科の専門分野もそうですが、睡眠歯科も専門性が高く、また保険と自費の双方のOA治療の進め方をくまなく網羅して書きましたので、それなりに厚みのある本になってしまいました(笑)。
患者さんの“命”を救える口腔内装置治療
――最後に、読者へメッセージを。
OA治療は、患者さんの全身の健康とQOLに貢献できます。また、ともすれば患者さんの命をも救うことができる、すばらしい歯科医療の1つです。それでいて、硬・軟組織への侵襲がない可逆的な治療法でリスクも少ないため、歯科治療の1オプションとして取り入れやすいものだと思います。実際に、きちんとした知識さえ得られれば治療自体はそれほど難しいものではありませんので、本書をきっかけにぜひOA治療に取り組んでいただければうれしいですね。
――本日はありがとうございました。
