2015年1月11日掲載
「天然歯を守るための知識と技術」をテーマに
第19回米国歯科大学院同窓会(JSAPD)公開セミナー盛大に開催
講演のなかではとくに、宮下裕志氏(東京都開業)による「本当にエンド治療で天然歯を維持出来るのか?」が注目を集めた。氏は、歯を失う原因の8割はう蝕と歯周病としたうえで、予防的臨床を行えば歯は残せるとの考えのもと、世界および日本発の文献に加えて、自院のリサーチ結果をもとに天然歯を守るための知識と臨床と技術の実際を紹介した。そして、会場の先生方に各医院の現状を把握してEBMを実践すべきと説き、その教育的な質の高い講演に会場は沸いた。
また、矯正分野からは文野弘信氏(東京都開業)が「インターディシプリナリーアプローチにおける矯正歯科治療の役割:ペリオケースを中心に」、加治彰彦氏(東京都開業)から「矯正治療はどの程度天然歯のクオリティーを高めるのか?」の2演題が行われた。それぞれ、主要な文献をあげながら潮流を解説するとともに、文野氏は歯周疾患をともなう咬合崩壊症例に対して矯正治療を応用して咬合改善を導いた治療例をもとに矯正治療による形態と機能の回復、審美性の獲得について解説。加治氏は、矯正治療介入の際のリスクとベネフィットを検討し患者との対話により判断を下せば意味のある矯正治療となるであろうとした。また、その後のディスカッションでは重度歯周病罹患者における矯正治療の介入時期・方法が1つのテーマとされ、積極的な討議が行われた。従来は天然歯を守るというとう蝕や歯周病、そして抜歯か否かの判断基準ばかりが注目されたが、本セミナーでは矯正治療も重要視され、時代の流れを強く感じたとの反響が会場からあった。
また、午後に入ると、歯周、補綴、インプラントなどに関する講演がなされ、ディスカッションでは、ナイトガード使用の是非、天然歯保存とインプラント治療の関係について議論がなされた。
昨今の潮流が「天然歯を守る」となるなか、会場は若手の先生を中心に満員であり、明日からの臨床に役立てようと熱心にメモを取る姿が見られた。