2022年11月12日掲載
「全方位の臨床検査が歯科医療を変える」をテーマに
日本口腔検査学会 第15回学術大会開催

基調講演1では、花田信弘氏(鶴見大名誉教授)が「ウィズコロナ時代における唾液ヘモグロビン検査の重要性」と題して講演。体内で起こっている「慢性炎症」は、糖尿病、高血圧、脂質異常、肝疾患、認知症、がんなどさまざまな疾患につながるとされる。そのため健康寿命の延伸には、慢性炎症を抑えることが重要となる。炎症巣になりうるのは、主に(1)口腔、(2)腸管、(3)内臓脂肪。う蝕や歯周病に侵された口腔内が炎症巣となるのは当然として、腸に入り込んだ口腔細菌が腸管内の炎症にも関与していることが近年の研究でわかってきている。さらに内臓脂肪にも、食物の摂取にかかわる口腔は無関係ではない。慢性炎症があると、炎症により毛細血管が拡大・腫脹し、赤血球のヘモグロビンが破壊されて唾液に混入する。つまり、唾液中のヘモグロビン量を調べる「唾液ヘモグロビン検査」を行うことで、全身の慢性炎症の状態を把握できることにつながる。そうした背景から、氏は「唾液ヘモグロビン検査を国民皆歯科健診に取り入れるべき」と強調した。
基調講演2では、斎藤一郎氏(鶴見大前教授、ドライマウス研究会代表)が登壇。「ドライマウスと口腔検査」の演題で、鶴見大のドライマウス外来で約20年間、8,000人の患者を診てきた経験をもとに、ドライマウス患者の特徴や、ドライマウスの原因と引き起こされる疾患、そしてドライマウスの検査方法を総論的に解説した。検査については、問診の内容や唾液量検査(サクソンテスト・ガムテスト・安静時唾液測定・涙液量検査)、生検のしかたなど、鶴見大の検査手法を順を追って説明した。
シンポジウムでは、厚生労働省の歯科保健課長と民間企業3社の代表が登壇。「臨床検査のDX(デンタルトランスファーフォーメーション)」の演題に沿って、検査機器で得られた患者データを、レセプトコンピュータやカルテコンピュータにシームレスに移送するデータ管理技術の展望が示された。まず小椋正之氏(厚生労働省医政局歯科保健課長)が、現在の日本国民の歯科受診状況と、「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討」が骨太の方針に盛り込まれたことを説明。続く鈴木 誠氏(株式会社ミツトヨ)と斎藤一彦氏(株式会社MEDIC)は、検査結果のデータを移送する技術について解説。そして漆原譲治氏(株式会社FOD)が、自身が開発した「Perio navi」(歯周検査のデータ管理ソフト)を例に、検査結果を自動的に図やイメージにして表現するシステムを披露した。