学会|2025年7月1日掲載

「診断から補綴まで―デジタル技術が変える包括的矯正治療戦略―」をテーマに

日本包括的矯正歯科学会(JIOS)、2025年第2回例会を開催

日本包括的矯正歯科学会(JIOS)、2025年第2回例会を開催

 さる6月29日(日)、日本包括的矯正歯科学会(JIOS、綿引淳一代表理事)による2025年第2回例会が、野村コンファレンスプラザ日本橋(東京都)にて開催された。「診断から補綴まで―デジタル技術が変える包括的矯正治療戦略―」をテーマに、歯科医師を中心に約60名が参加し盛会となった。

 本例会の前半では、吉田茂治氏(埼玉県開業)と徳永耕一郎氏(東京都開業)が講師として招聘され、特別講演を行った。吉田氏は「歯科医療の進化を支える3Dプリンタ―チェアサイドでの実践的アプローチ―」と題して、3Dプリンタの種類と特性、補綴装置などの設計に用いるCADソフトウェア、国内で使用可能な材料などの基本情報を解説した。また、チェアサイドで3Dプリンタを用いた暫間修復物を作製することのメリット、プリント時のエラーを防ぐための設計上の工夫など、自身の臨床実践に基づく知見を共有した。徳永氏は「3Dプリンティングで拡がるデジタルデンティストリーの実践」と題して、3Dプリントのワークフロー、薬機法をふまえた材料の選択、3Dプリントによる生産性の向上を取り上げ解説した。特に材料の選択については、国内では歯科用3Dプリンタと材料がセットで認可されているため、プリンタによって使用できる材料の制限がある点に注意すべきとした。

 続いて、綿引氏、吉田氏、徳永氏に加え、矯正歯科治療に早くから3Dプリンタを活用しているという間所 睦氏(東京都開業)が登壇し、4名によるパネルディスカッションが行われた。吉田氏と徳永氏は一般歯科医の立場から、綿引氏と間所氏は矯正歯科医の立場から、デジタル技術の臨床活用とスタッフ教育について議論を交わした。また、会場の歯科技工士らも交えて、従来のアナログ技術とデジタル技術のすみ分けについての意見交換もなされた。

 後半では会員発表が行われ、篠塚有希氏(東京都勤務)が「AngleⅡ級2類に対してBiological Optimized Occlusion ConceptおよびDIP法に基づいて診査診断と矯正治療を行った一症例」、神山剛史氏(埼玉県開業)が「患者のライフステージを考慮し包括的歯科臨床を行った症例」と題して登壇した。篠塚氏は、本学会の包括的矯正歯科治療マスターコースにて臨床実習を行った一症例を供覧し、顎関節症を有する患者が治療中に開口障害を生じた際の対応を紹介した。次いで神山氏は、患者のライフステージを20~40歳、40歳以降、50~70歳の3つに分け、各年齢層に適した最小限の治療介入により、最大限の治療効果と長期安定化を図るための治療戦略の考え方を解説した。

 なお第3回例会は、きたる9月28日(日)に同会場において「多角的見地から迫る睡眠時無呼吸症候群」をテーマに開催予定である。

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