学会|2025年7月1日掲載
「口腔機能の維持・向上で老年学に貢献する~輝く100年を口とともに生きる~」をテーマに
日本老年歯科医学会、第36回学術大会を開催
さる6月27日(金)から29日(日)の3日間、幕張メッセおよびTKP東京ベイ幕張ホール(いずれも千葉県)において、日本老年歯科医学会第36回学術大会(片倉 朗大会長、平野浩彦理事長)が「口腔機能の維持・向上で老年学に貢献する~輝く100年を口とともに生きる~」をテーマに開催された。今回は、2年に1度の第34回日本老年学会総会(7学会合同大会)の分科会としての開催であった。
本大会では、理事長講演、海外特別講演、シンポジウム、特任委員会セッション、ベーシックセミナー、ランチョンセミナー、スポンサードセミナー、合同シンポジウムなど、多数のプログラムが企画された。また、老年7学会合同のシンポジウムでは各学会が企画を出し合い、歯科では合同シンポジウム5「食と栄養~“食べる”を再考する~」を演題に講演が行われた。
28日の理事長講演では、座長を水口俊介氏(東京科学大学)が務め、平野浩彦氏 (日本老年歯科医学会理事長/東京都健康長寿医療センター)が「ともに生き、ともに創る:共生社会への老年歯科医学のかかわり」と題して講演を行った。
平野氏は、老年歯科は“高齢者の歯科”ではなく、そこに至るプロセスを包括する学問であると述べ、高齢者の生活支援や施策構築への寄与を目的とした老年歯科学のあり方を提示。その中心となるキーワードとして“共生”“ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)”“当事者”を挙げ、日本老年歯科医学会におけるさまざまな委員会活動や、当事者を含む多様な視点を取り入れることの重要性を強調した。
シンポジウム6「歯科におけるオンライン診療について」では、座長を大神浩一郎氏(東京歯科大学)と田代宗嗣氏(千葉県立保健医療大学)が務めた。まず、田代氏が歯科におけるオンライン診療の現状や用語の整理を行い、小嶺祐子氏(厚生労働省医政局歯科保健課)が国の動向を概説。菊谷 武氏(日本歯科大学)が老年歯科を中心としたオンライン診療の活用事例と今後の展望を紹介した。
なかでも菊谷氏は、接触をともなわない診療が多い老年歯科領域はオンライン診療との親和性が高く、通院困難な高齢者や歯科医師の不足する地域における有効な支援手段となり得ると指摘。実際に多職種や支援者と連携し、在宅や施設でオンライン診療が実施されており、対面診療と同等の効果が確認されているという。一方で、情報通信環境や患者の操作スキルといった課題もあり、今後の制度設計や支援体制の整備が求められるとまとめた。
なお、次回の日本老年歯科医学会第37回学術大会は、きたる2026年6月12日(金)から14日(日)の3日間、グランキューブ大阪(大阪府)において開催予定である。