社会|2025年6月23日掲載

「アライナーの原理と真実」をテーマに

第13回Diamond Study Club for Invisalign開催

第13回Diamond Study Club for Invisalign開催

 さる6月19日(木)、第13回Diamond Study Club for Invisalign(牧野正志氏〔千葉県開業〕、東野良治氏〔東京都開業〕、竹内敬輔氏〔愛知県開業〕主宰)がWeb配信にて開催された。今回は東野氏がモデレーターを務め、講師として間所 睦氏(東京都開業)が「アライナーの原理と真実 ―あなたのアライナー症例はなぜ思い通りに動かないのか?―」をテーマに講演した。

 間所氏は2001年から大学院および自院にてアライナー矯正歯科の臨床や研究を20年以上にわたり行ってきたエキスパートであり、これまでの道のりを「期待と失望の繰り返し」と振り返った。国際的にはさまざまな講演や論文においてアライナーによる改善が可能な歯のメカニズムについて客観的に議論しようとする機運があるが、日本では良し悪しでしか議論されていないところがあるとし、さまざまな国際的論文を挙げ、これまでにアライナー矯正治療がどのように議論されてきたか、どこまでが限界であると明言されているかなどについてまとめて紹介した。また、アライナー材料についてもメーカーが提供する情報以外に検討されることが少ないことを指摘した。

 そのうえでよく言われる「アライナーはトルク移動および歯体移動を苦手とする」理由について「弾性率が極端に低く強い力を維持できない」「レジリエンシー(復元力)が低くエネルギーを歯に伝えにくい」「ストレスリラクゼーション(応力緩和)により力が急減」「活性化を増やすと逆に力が減る逆説的性質」「力が歯冠表面に分散し抵抗中心に届かない」「アルゴリズムが歯根形態を考慮していない」「アタッチメントの効果が限定的」の7つを挙げ、それぞれのアライナーの限界の要因について、文献と自身の臨床実感を交えて考察した。

 またアライナーや固定式装置に限らず、矯正歯科治療で欠かせないのは「診断が先でその後に治療方針や計画、装置が決まる」「診断は装置に従属しない」という考え方であるとし、装置の枠を超えてさまざまな治療選択肢を矯正歯科医側がそろえ、患者がアライナー矯正治療を希望したとしても、よりその症例にとって適切な治療選択肢を提示し、緊密に咬合する機能的・審美的結果を獲得することの重要性について解説した。

 そしてまとめとして、アライナー矯正治療に関して留意すべきことに、「いまだ発展途上の技術であること」「企業発のエビデンス、キーオピニオンリーダーの発信に好印象が強く残りがちであること」「デジタル化によって治療が実際にうまくいくように錯覚してしまうこと」「モニタリングの重要性」を挙げた。アライナーは今後デジタル技術の助けもあってさらに解明が進んでいくであろうが、アライナーでできることには限りがあり、困難な移動には補助的装置や固定式装置の積極的な使用が必要であり、何を選択し信じるにしても、すべての責任は歯科医師にあることを肝に銘じたうえで治療にあたるべきとした。

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