社会|2025年12月16日掲載
「審美インプラントの最前線~前歯部における組織と歯の調和~」をテーマに
THREEE./EL会/SII Special Collaboration Seminar 〜Implant & Aesthetic Conference〜開催
さる12月14日(日)、秋葉原UDXシアター(東京都)において、THREEE./EL会/SII Special Collaboration Seminar 〜Implant & Aesthetic Conference〜(THREEE./SII/EL会主催)が「審美インプラントの最前線~前歯部における組織と歯の調和~」をテーマに開催され、若手歯科医師を中心に約120名が参集した。
午前の部では、本会主催の勉強会を代表して、福居 希氏(奈良県開業、SII)と矢野孝星氏(東京都開業、EL会)が登壇した。福居氏は、審美領域におけるインプラント治療の基盤となる硬・軟組織をいかに再建し、マネジメントしていくかについて、外科的戦略の観点から講演を行った。続いて矢野氏は、審美診断に基づき、デジタル技術を活用しながら最終補綴装置から逆算した治療計画を立案し、組織をマネジメントしていく補綴戦略について論じた。
午後の部では、特別演者としてTodd R. Schoenbaum氏(米国・Augusta University Dental College of Georgia)および土屋賢司氏(東京都開業)を招聘した。
Schoenbaum氏は「Implant Prosthetics in the Aesthetic Zone ~Science, Protocol, and Technique~」と題し、審美領域における軟組織、特に歯間乳頭の形態を、プロビジョナルレストレーションを用いてコントロールするための戦略的なプロトコルについて詳説した。まず、インプラント周囲の軟組織は本質的に平坦になろうとする性質をもつことを指摘。そのうえで、理想的な歯肉の立ち上がり(エマージェンスプロファイル)を形成、維持するためには、プロビジョナルレストレーションがきわめて重要な役割を果たすと述べた。プロビジョナルレストレーションを単なる“仮の歯”ではなく、“積極的な治療装置”と位置づけ、カスタム印象採得のテクニックやポンティックデザインなど、具体的な臨床手順が示された。
続いて土屋氏が登壇し、「Clinical Stories for Successful Restorative Therapy ~Interdisciplinary Treatment Strategies~」と題して講演を行った。前歯部に限らず全顎的な治療を対象に、自身の臨床経験に基づいた内容が展開された。そのなかで、キャリア初期の1990年代に経験した全顎的治療の失敗例を率直に共有し、専門医に治療を委ねるだけの“マルチディシプリナリー”ではなく、計画段階からチームで議論し、ゴールを共有する真の“インターディシプリナリー”アプローチの重要性が強調された。また、真に成功する治療のためには、機能や構造、生物学を治療計画に組み込む以前に、まず審美的な目標を明確に定義する必要があるという“エステティックファースト”の考え方についても言及した。
本会の最後には、Schoenbaum氏および土屋氏から参加者に向けてメッセージが送られた。土屋氏からは、診療に対する包括的な視点をもつことの重要性と、長期的なキャリア形成に向けた指針が示された。また、Schoenbaum氏からは、3つの勉強会が協力し合いともに学ぶ環境は、どの国や地域にもあるわけではない非常にすばらしい取り組みであるとの言葉が寄せられ、温かな激励の言葉とともに盛会裏に閉幕した。