学会|2026年11月2日掲載
「ニコチンパウチの危険性を考える」をテーマに
口腔科学者フォーラム開催
さる10月30日(金)、東京大学医学部附属病院分子ライフイノベーション棟(東京都)において、TNFDR(脱タバコ・脱ニコチン社会実現歯科研究ネットワーク)合同委員会(長尾 徹委員長)、日本口腔科学会(星 和人理事長)、公益財団法人 国際医療財団(瀬戸●(かん)一[●は日へんに完]会長)の合同主催による口腔科学者フォーラム「ニコチンパウチの危険性を考える ~20年、30年先の口腔の健康を見据えて~」が、現地とWeb配信とあわせて400名以上の多数の参加のもとに開催された。
本フォーラムは、口腔内に留置して直接ニコチンを摂取する新しい形態のオーラルタバコ「ニコチンパウチ」が身近な場所での販売が始まっていることを受けて、その口腔への影響などについて現時点での情報を得る機会を提供することを目的に企画されたもので、TNFDR合同委員会を構成する歯学系10学会からの代表者を中心に講演が行われた。演題と演者は下記のとおり。
「無煙たばこの世界 ―その基礎知識」 長尾氏(TNFDR合同委員会/愛知学院大学)
「緊急提言へのニコチン・LPS分子レベルの考察」 埴岡 隆氏(日本口腔衛生学会/宝塚医療大学)
「歯周組織を脅かすニコチンパウチのリスク」 稲垣幸司氏(日本歯周病学会/愛知学院大学)
「ニコチン使用患者に対するインプラント治療」 阪本貴司氏(日本口腔インプラント学会/大阪府開業)
「口腔癌と喫煙歴との関連 ―原発部位別の検討―」 原田浩之氏(日本口腔外科学会/東京科学大学)
「ニコチンパウチと口腔粘膜」 里村一人氏(日本口腔内科学会/鶴見大学)
「命が助かっても、戻らない日常がある —進行口腔がんの過酷な現実—」 上田倫弘氏(日本口腔腫瘍学会/北海道がんセンター)
「歯科系10学会(TNFDR)・⽇本⼝腔科学会からの発⾔」 行田長隆氏(日本臨床歯周病学会/東京都開業)、星氏(日本口腔科学会/東京大学)
ニコチンパウチはまだ論文が限られており、そのリスクに対するエビデンスの構築が待たれるが、各演者はその使用によるニコチン依存症や局所的・全身的な健康被害への影響などについて、現時点での知見や症例を通じて警鐘を鳴らした。講演のなかで稲垣氏は、海外のケースで、20代のわずか1年前後のニコチンパウチの使用にもかかわらず重度の歯肉退縮が生じた症例を紹介し、若年層にはこのような歯茎が下がり、元に戻らなくなる事実を通じて、強い警告メッセージが発せられるのではないかと指摘した。また、上田氏はヘビースモーカーによる重度の口腔がん手術症例を供覧のうえ、どんなに高度な治療を施しても顔貌、言葉、食事、味覚といった人間らしく生きるための機能は100%元どおりには再生できないと強調し、手軽な誘惑によるニコチン摂取に対する危険性を強く訴えた。
最後に、長尾氏がTNFDRとして、ニコチン依存に対し歯科がどうかかわっていくか、国民や世界に警鐘を鳴らしていくためにはどのような情報が必要か、他の関連職種や団体とどのような連携が必要か、をテーマに今後も活動を展開していきたいとの方針を述べ、会を締めくくった。