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2023年9月号掲載

8020達成者率と今後の国民運動の行方

 令和4年歯科疾患実態調査において、8020達成者率は51.6%と発表されました。前回(平成28年)と比較してわずか0.4%増という結果です。平成23年(38.3%)から平成28年(51.2%)における直線的な増加が継続すると仮定した予測値、約65%とは大きく乖離しました。「8020運動」のギアをさらに上げるために、国民運動のあり方を再考する絶好の機会と思われます。

 30数年前、男性の平均寿命が80歳に達しておらず、8020達成者率が一桁台の時期に「8020運動」が始まりました。この運動は「う蝕の洪水」という社会的な問題への対策としても推進されました。特に将来を見据えた前向きなアプローチが功を奏し、画期的な国民運動の一例となりました。

 しかしながら、歯科疾患は蓄積的な特徴があり、永久歯の数が増えることはないため、早い段階で歯を失った人には、8020の目標達成が難しいかもしれません。また、高齢者の問題として位置づけされやすく、歯科疾患予防の最前線にいる若年層にはそのメッセージが届きにくい可能性があります。

 歯数はもっともわかりやすい指標の1つですが、これに加えて毎日の食事や会話することなど、口腔機能を維持・向上する観点から、若年層を含めすべての世代に意義があり、数値化できる指標や目標値が必要です。

 そして、すべての世代にわたる口腔健康管理を促進するための目標値であるべきです。この数値化された情報を個人の健康記録(PHR)で確認できる仕組みの整備も期待されます。