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2022年7月24日

日本臨床歯科学会東京支部 2022年度テクニシャンミーティング、Web配信にて開催

意欲ある多数の歯科技工士が参集

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 さる7月24日(日)、日本臨床歯科学会東京支部2022年度テクニシャンミーティング(日本臨床歯科学会東京支部主催、大河雅之会長)がWeb配信にて開催された。本ミーティングは、日本臨床歯科学会(Society of Japan Clinical Dentistry〔SJCD〕、山崎長郎理事長)の東京支部が例年開催している、同支部所属の歯科技工士のための発表の場。例年、同学会所属の著名歯科技工士や気鋭歯科技工士、ときには歯科医師が登壇することで注目されている。以下に、今回示された3題の演題・演者および概要を示す。

1)「SOPHISTICATION FOR COMMON SENSE OF THE RESTORATIVE DENTISTRY」(土屋 覚氏、DENT CRAFT STUDIO)
 本演題では、10年ほど前からノンプレップ(無形成)での修復治療、またairway dentistry(顎位、咬合、歯列と睡眠時無呼吸症候群の関連を取り上げる歯科の分野)に取り組んでいる演者が、(1)火消しの話、(2)長期症例、(3)最近の症例の3パートに分けて講演。(1)では、歯牙を切削することが常識であった歯科から現在のMI(Minimal Intervention)、さらにはノンプレップでの処置が行えるようになってきたことについてふれたうえで、歯に関するあらゆるトラブルが過負荷から起きていること、またブラキシズムについては血中酸素濃度の低下がトリガーとなっていることなどについて示し、さまざまなトラブルの原因となっている「火」を消すことが歯科治療の基本であるとした。また(2)と(3)では(1)をふまえ、ノンプレップあるいはMTAP(Morphological Tooth Augmentation Procedure、山崎氏が提唱するバーティカルプレパレーションの一種)で処置した3症例を供覧。8歯の先天性欠損に対して矯正歯科治療とともに行ったアプローチ、上顎6前歯の修復から患者の要望もありフルマウスリコンストラクションに移行した症例、そして骨格性下顎前突の下顎枝矢状分割術を受けた後に閉塞性無呼吸症候群を発症したため、再度2-jaw surgeryで下顎を前方に移動させた症例に対する矯正歯科治療と補綴処置について示した。

2)「MTAP を応用したフルマウス症例」(阿部倫一郎氏、青森県勤務)
 本演題では、前演題で述べられたMTAPを応用したノンプレップでのフルマウスリコンストラクション症例について、検査・診断から最終補綴装置までをみずから行った過程を供覧。MTAPにおける支台歯形成の特徴と手技、ノンプレップの症例に対する口腔内直接流し込みプロビジョナルレストレーションのための準備と仕上げ、MTAPに特有のワックスアップと模型のトリミング法、そしてプレスセラミックスによる最終補綴装置の仕上げと陶材築盛について詳細に示したうえで、咬合再構成をノンプレップというもっとも侵襲が少なくかつ可逆的な方法で行うことのメリットを訴えた。また、本症例における技工操作を歯科医師の立場ですべてみずから行った経験から、歯科医師が歯科技工を体験することの大切さも示した。

3)「ノンプレップフルマウスに於けるラボワークの実際」(西 高広氏、LaLuce design work’s)
 本演題では標題のとおり、ノンプレップによるフルマウスリコンストラクションに対し、歯科技工士の立場から症例を供覧。「これまでの、削って被せる補綴装置とは異なり、頭を柔軟にして取り組む必要がある」と述べたうえで、咬合高径の挙上と下顎位の前方移動が求められた症例を基に、概形印象採得、診断用ワックスアップとそのための各種基準、口腔内直接流し込みプロビジョナルレストレーションのためのモールドマトリックスの製作、口腔内におけるレジン流し込みの過程、咬合調整、プロビジョナルレストレーションによる経過観察後の精密印象と最終的なワックスアップ、そして模型製作と最終補綴装置製作までの工程を示した。また、講演の終盤になり、今回示した症例が演者みずからの口腔内だったことを発表し、「舌房確保のために臼歯部の舌側咬頭を除去したが、舌を噛むことはない」「睡眠時無呼吸があったが、口腔の体積が確保され、無呼吸が改善していると思う」と、みずからが患者であるという実感を基に治療結果について語った。

 なお、全演題の終了後にはディスカッションの時間も十分に設けられ、会場内で参加していた日本臨床歯科学会東京支部の役員からの質問やWeb経由で寄せられた会員からの質問を基に、ノンプレップに対する疑問や臨床のコツなどについて活発に意見交換が行われた。