2026年4月号掲載
パノラマの撮影・読影はこれ1冊!
パノラマを診断と思考の起点とし 臨床に活かすための実践書
※本記事は、「新聞クイント 2026年4月号」より抜粋して掲載。
2026年2月に刊行された、相宮秀俊氏による著書『チェアサイドですぐ役立つ! 撮影・読影テクニックパノラマ診断 パーフェクトガイド』。本欄では、著者の相宮氏に本書の特徴や読みどころ、活用法などについて語っていただきました。 (編集部)
本書を執筆したきっかけ
パノラマエックス線写真(以下、パノラマ)は多くの歯科医院で初診時に撮影され、歯列、顎骨、顎関節、上顎洞までを1枚で俯瞰できる、まさに「歯科診断の交差点」ともいえる画像です。しかし、その価値が十分に言語化・体系化されてこなかったという実感が私にはあり、現状を見ると、その撮影や読影はOJTに依存しがちで「なぜそのように写るのか」「どの順序で何を見ればよいのか」を体系的に学ぶ機会は意外と限られていると思います。
私自身も、卒業直後はパノラマを前に患者へ説明することに苦慮しながら、臨床の現場で試行錯誤を重ねてきました。愛知学院大学歯科放射線学講座での経験や、多領域の臨床家が集う環境のなかで議論を重ねるうちに、診療科を越えて共通言語となる画像として、つねに中心にあったのがパノラマであったことに気づかされました。
さらに、開業後に全顎的視点からパノラマを用いたコンサルテーションの重要性を学んだことで、診断コンセプトは大きく変化し、歯周、補綴、咬合、矯正、口腔外科──といった分野を分断して考えるのではなく、1枚のパノラマから口腔全体を俯瞰し、時間軸を含めて将来を考えることが、治療の質を大きく左右すると確信するに至りました。
本書は、こうした背景のなかで私自身の学びと臨床経験をもとに、「感覚的に行われがちなパノラマ読影」を可
能な限り言語化し、再現性のある形で共有したいという思いから執筆しました。若手歯科医師や歯科衛生士にとっては診断の拠り所となり、経験を積んだ臨床家にとっては自身の診断プロセスを見直すための指針となる──日常診療の手元で繰り返し参照できる実践書を届けたいという願いが、本書の根底にあります。
パノラマの特性と限界について
本書をとおしてまず理解できるのは、パノラマの特性と限界です。デンタルエックス線写真やCBCTと比較した際の役割の違いを明確にしたうえで、パノラマは「何を得意とし、何を不得意とするのか」について、ていねいに整理しました。断層域の存在や重なりによる像の歪みといった特性を正しく理解することで、「見えている情報」と「見えていない情報」を峻別できるようになり、不要な誤読や過信を避ける視点が身につきます。
パノラマで全体を診る・読む
本書のもう1つの大きな特徴として、パノラマを“部分”ではなく“全体”で読む思考を重視している点です。
う蝕や根尖病変といった局所所見の確認にとどまらず、歯列全体の連続性、左右差、咬合支持域の状態、顎骨形態、さらには顎関節や上顎洞までを1枚の画像から俯瞰することで、口腔内の構造的な問題点やリスクが浮かび上がる。これにより、場当たり的な処置ではなく、治療の優先順位や将来的な展開を見据えた診断が可能となります。これらについては、本書でとくに詳しく・やさしく解説していますので、ぜひお読みいただければと思います。
また、本書ではライフステージに応じたパノラマの読みどころについても詳しく解説しています。成長期では歯の萌出状況や歯列発育、成人期では歯槽骨の形態や咬合の安定性、高齢期では残存歯数や骨吸収の進行、全身状態との関連性など、年齢によって注目すべきポイントは大きく異なります。パノラマを時間軸のなかで捉える視点が加わることで、「今どうなっているか」だけでなく、「これからどうなるか」を考える診断力が養われます。
患者説明、チームでの活用に!
本書からは、パノラマを診断に活かす力だけでなく、治療計画立案や患者さんへの説明資料として応用する視点も身につきます。パノラマは患者さんにとって理解しやすい画像であり、治療の全体像やリスクを共有するための有効なコミュニケーションツールとなり得ます。治療前後の変化を示すことで納得感のある説明が可能となり、患者さんとの信頼関係構築にも寄与します。また、院内で同じパノラマを共有することで、歯科医師・歯科衛生士・スタッフ間の認識が揃い、チーム医療の質が向上する点も見逃せません。
本書が目指したポイント
本書が目指したのは、「パノラマをたくさんみること」ではなく、「パノラマをどう考えるか」を言語化することです。経験を積むなかで自然と身につく診断の勘や視点を、できる限り整理し、再現可能な形で提示することに重きを置きました。
若手歯科医師や歯科衛生士にとっては、診断の基礎を固める指針となり、経験を重ねた臨床家にとっては、自身の診断プロセスを再確認し、ブラッシュアップするための1冊となると確信しています!