2019年10月5日掲載
全国から歯科医師、歯科衛生士ら約750名が参加し盛会となる
オーラルフィジシャン・チームミーティング2020開催
初日は丸山 至氏(酒田市長)の挨拶の後、パート1「人口減少・少子高齢化社会へ我々はどう立ち向かうか?」が開催された(コーディネーター:西 真紀子氏、NPO法人最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会 理事長)。累計75万部を突破した『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)の著者でジャーナリストの河合雅司氏が登壇。「未来の年表――人口減少日本で起きること」と題し、医療・介護を取り巻く環境の激変や地方が直面する課題を解説し、社会システムの変更が迫られている日本の現状が示された。
つづいて熊谷 崇氏(山形県開業)からは、64歳以下の国民の医療費では歯科がトップであること、持続可能な医療のために歯科の予防推進が果たす社会的な意義、予防効果が実証されているメディカルトリートメントモデル(MTM)のさらなる普及の重要性が説かれた。
また、経営難に陥る地域基幹病院が増加するなか、庄内地区の医療機関の統合再編に取り組み、みごと黒字化に成功した日本海総合病院理事長の粟谷義樹氏、庄内地方初のベンチャー企業として発展を続けるYAMAGATA DESIGN代表取締役の山中大介氏が登壇。丸山氏を交えたディスカッションでは、人口減少社会を迎える日本と地方の医療と街づくりをテーマに、活発な議論が交わされた。
午後はパート2「人口減少・少子高齢化社会における歯科診療所の役割・取り組み」と題し、川原博雄氏(徳島県開業)、菅野 宏氏(富山県開業)、佐々木英夫氏(山形県開業)、加藤大明氏(栃木県・福岡県開業)、武久文之氏(富士通株式会社)による講演とディスカッションが行われた。歯科医師の4氏からは、地域の人口が減少するなか、メインテナンス率の定着による来院数の増加、訪問歯科診療、小児歯科の充実、治療のスキルアップのなど、10年後を見据えて進める取り組みが報告された。武久氏からは、日吉歯科診療所と進める歯科医院向けクラウドサービスに関して、モバイルテクノロジーを活用した患者の口腔の健康向上の取り組みと課題、政府が推進する企業の健康経営に関して富士通の取り組みが紹介された。
2日目は、パート3「歯周病の新分類の概要と臨床応用について」と題し、ペリー・クロッキボルト氏(米国・UCLA歯学部教授)の講演が行われた(コーディネーター:宮本貴成氏、米国・クレイトン大歯学部主任教授)。クロッキボルト氏に先立ち、宮本氏より歯周病のマネジメントにおけるITの有効活用の提言があり、その後クロッキボルト氏から、歯周病の新分類の解説と、患者の行動変容を促した教育力によって非外科的歯周治療と良好な予後が可能となった臨床例が紹介された。
また、午後からは、市民公開講座を兼ねた特別講演として、日本の医療政策の転換を推進するキーマン、江崎禎英氏(経済産業省 商務・サービスグループ政策統括調整官兼内閣官房健康・医療戦略室次長)が登壇。「生涯現役社会の構築 高齢化の進展と疾患の性質変化をふまえて」と題し講演を行った(コーディネーター:熊谷直大氏、東京都開業)。病気になるまで放置しておき治療を受ける「出たとこ勝負の医療」からの脱却と予防を主軸とした健康長寿社会の構築を目指し、すでに実施されているさまざまな政策が語られた。少子高齢社会をめぐる悲観的な見方を一変させる明快な論旨に、会場からは盛大な拍手が送られた。
最後は山口絵理子氏(株式会社マザーハウス代表)が「途上国から世界に誇れるブランドを!女性起業家が挑む新たなビジネス」と題して講演。途上国がもつポテンシャルを引き出し、新たなプロダクトとビジネスを生んでいる熱い想いを語った。働くことの意味、ともに作ることの喜びなど、明日の臨床にも生きるアドバイスが贈られた。
なお、オーラルフィジシャン・チームミーティングは来年を酒田におけるファイナルとし、きたる2020年10月3日(土)、4日(日)の両日、ダン・エリクソン氏(スウェーデン・マルメ大)他を招聘して開催の予定である。