社会|2024年9月30日掲載

MFTとオーストリアン・ナソロジーをテーマに

包括的矯正歯科研究会(IOS)、2024年第三回例会を開催

包括的矯正歯科研究会(IOS)、2024年第三回例会を開催

 さる9月29日(日)、包括的矯正歯科研究会(IOS、綿引淳一代表)による2024年度第三回例会が野村コンファレンスプラザ日本橋(東京都)の現地およびWeb配信にて開催された。「次世代MFTの可能性/非抜歯矯正とオーストリアン・ナソロジーの真実」をテーマに、約80名が参加し盛会となった。

 例会の前半は、大会長の榊原 毅氏(神奈川県開業)の司会・進行の下、MFT(口腔筋機能療法)をテーマに2名が登壇。まず阿部恵美子氏(言語聴覚士、東京医薬看護専門学校言語聴覚士科)が「言語聴覚士からみたMFT」と題し講演した。阿部氏は、父兄からの「子どもが舌足らずで、話すときに舌が出ている」といった相談例を挙げ、その原因の1つとして構音障害を紹介し、その症状や音声を用いて構音障害が生じている具体例を解説した。さらに、構音障害に対し、歯科が行うMFTと言語聴覚士が行う構音訓練を比較し、そのゴールが「口腔周辺の筋力増強などによる正常な歯列形態への改善」と「舌の筋力増強などによるスムーズな発話、講音」といった違いがあることを指摘した。しかし、MFTと構音訓練を両立した場合のほうが治療の効率性があるとし、「MFTに発話や呼吸も含めた口のはたらきのすべてをカバーできる訓練法の開発を期待したい」と述べた。

 次に、内藤和美氏(フリーランス歯科衛生士)が、「口腔機能低下予防から包括的歯科治療へのアプローチ」と題して講演した。内藤氏はオーラルフレイルの発生機序から口腔機能低下症の診断方法などを解説。そして、「患者への歯周基本治療時などに患者の生活環境や、むせる、のどのとおりが悪いなどの現状の変化を把握する」ことの重要性を指摘した。

 後半においては、Justine Annan氏(IOS国際化推進顧問)の司会・進行の下、グローバルセッションを英語で実施した。そのなかで、ドイツ・シュトゥットガルト在住の宮川順充氏(ドイツ開業)が、「巷でときどき耳にするオーストリア咬合学(Slavicek・Sato理論)とは何なのか?―その概念の理想と実際―」をテーマに講演した。宮川氏は、オーストリアン・ナソロジーの中心人物である元ウィーン大学のルドルフ・スラビチェック氏の下で矯正歯科治療を担当した経験に基づき、スラビチェック氏の生い立ちや性格を含めてオーストリアン・ナソロジーの理論や臨床方法を解説した。とくに佐藤貞雄氏(元神歯大歯科矯正学教授)のMEAW(multiloop edgewise arch wire)テクニックを組み込んでからの臨床的変遷について、その疑問点も含めて中立的な視点から評価していた。

 会場では、犬歯誘導や下顎頭の設定などスラビチェックの咬合についての考え方が特に興味深かったようで、例会終了間際まで闊達な質疑応答が行われた。

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