学会|2025年11月20日掲載

6,000名以上が参加し盛況となる

第70回(公社)日本口腔外科学会学術大会が開催

第70回(公社)日本口腔外科学会学術大会が開催

 さる11月14日(金)から16日(日)の3日間、福岡国際会議場(福岡県)において、第70回(公社)日本口腔外科学会学術大会(楠川仁悟大会長、原田浩之理事長)が開催され、6,000名以上が参加した。

 「骨科学の無限の可能性:基礎から革新へ――骨代謝研究が拓く新たな地平」では、自見英治郎氏(九州大学歯学研究院OBT研究センター)が、骨科学研究では、骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞の動態、皮質骨と海綿骨のリモデリング周期の違い、顎骨と長管骨の違いなどを明らかにし、近年の研究では、破骨細胞の分化調節因子として、オステオプロテゲリン(OPG)、RANKL、Fam102aがはたらくメカニズムを明らかにした、と述べた。また、がんの顎骨浸潤の研究では、NF-κB、p130CasやBMPシグナルが口腔扁平上皮がんに関与すること、NF-κB阻害剤が顎骨浸潤を抑制すること、N139D変異体を発現する細胞はTNF-α刺激により浸潤能が高いことが明らかになり、SCC Ⅶ細胞を用いた顎骨浸潤モデルを用いた研究などが示された。そして、腫瘍が接近すると骨膜が肥厚して防御するという骨膜の新たな役割を示した塚崎雅之氏の研究などが紹介された。

 「口腔外科エマージェンシー――その時、あなたならどうする!」では、各演題で横尾 聡氏(群馬大学大学院医学系研究科口腔顎顔面外科学講座・形成外科学講座)ら5名の演者が、深頸部膿瘍・喉頭浮腫で気道確保のために気管挿管・気道切開が必要になり排膿と大出血が起きたケース、口腔底がんの手術後に頸動脈破裂症候群が発症するおそれがあるケース、放射線治療を受けたがん患者・低ナトリウム血症の患者などの異常出血ケース、化学放射線療法時の血管内皮障害、irAE(免疫関連有害事象)のケース、顎矯正手術時の声帯麻痺が起きたケースなどを示し、口腔・頭頸部の病変と手術で起きる致死的合併症の対策と対応を考察した。

 「口腔外科における局所解剖学の再考――そのメスの先にある構造を可視化するために」では、岩永 譲氏(Tulane大学医学部脳神経外科学講座)が、粘膜を切開する前にメスの先に存在する構造物をイメージすることが必要と述べた。そして、口腔内に切開をいれる際や、骨膜減張切開する際に、傷つけるおそれがある動脈や神経はどこにあるか? 全層弁を起こした歯肉弁の骨膜の裏に筋がある部位はどこか? 部分層弁で剥離した際に骨面に筋が残っていると、出血や収縮の原因になること、などを示した。また、臨床解剖で大事なのは、血管・神経の位置の平均値ではなく、分布幅であるとまとめた。

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