6期目を迎えた日本歯科医学会の「顔」

2023年8月号掲載

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2023年8月号掲載

6期目を迎えた日本歯科医学会の「顔」

歯科界の活性化につながるような場を提供したい

 住友雅人氏は、1982年より日本歯科医学会の活動に携わり、その後約40年にわたり本会および日本歯科医師会の委員会活動に取り組んできた。そのなかで、2013年に本会会長に就任後は新病名の創出や保険収載などをはじめ数々のテーマにかかわり、歯科界の多岐にわたるイノベーションの創出の舵取りを担うとともに、目指すべきビジョンを示してきた。本欄では、長年にわたる経験をもとに本会の事業内容や活動目的および日歯との関係性を含め、6期目の抱負をうかがった。

住友:日本歯科医師会(以下、日歯、高橋英登会長)第1回理事会が6月に開催され、日歯の新執行部が発足いたしました。7月4日付けにて日歯会長より日本歯科医学会(以下、本会)会長の委嘱状を頂戴し、6期目を任せていただきました。引き続き、2年間会務を遂行させていただきます。日歯と日本歯科医師連盟は新体制でスタートいたしますが、本会の人事に大きな変更がないことは政策の継続性とスピード感を保つうえでプラスに作用すると考えています。

 本会は、日歯の中に設置された学術研究組織であり、歯科界の活性化をテーマに掲げて活動しています。現在25の専門分科会および21の認定分科会を擁しています。内部組織である以上、必然的に日歯の活動に資することが求められますが、本会はこれまでの学会活動の実績から独自性も認められ、日歯が活性化するための効率的な支援策を提供してきました。2021年に示した「2040年への歯科イノベーションロードマップ」は、独自性を許されている最たる例といえます。

 日本では、保険診療をベースとした診療を行う歯科医院が大半を占めますが、新技術の保険収載において「医療技術評価(再評価)提案書」は、本分科会がエビデンスをもとに作成しています。これは、歯科業界のイノベーションを推進するうえで大きな意味をもちます。昨今では、歯科医療技術の進歩や高齢化などによる疾病構造の変化にともない、症状に応じた適正な病名やその対応が求められるようになりました。新病名の創出は、これまで疾病と認められなかった症状も保険治療の対象になり、疾病の早期発見や重症化の予防が期待されるようになります。2018年に「口腔機能発達不全症」と「口腔機能低下症」が新病名として保険適用されたことは、記憶に新しいのではないでしょうか。まさに、私が会長就任時から強調している「対価をともなう社会的貢献としての歯科医療を推進する」活動です。日歯はいわゆる政策をつくる歯科団体ですが、本会の学術的根拠(エビデンス)の提供は、日歯の事業活動において重要な役割を果たしているといえるでしょう。

 今期は歯科界の活性化につながるような場を提供することを重視し、次世代へつなげる2年間にしたいと考えています。また、会務を行うにあたり事業と人事が大切です。各分野に長けた人材が協働することによりシナジーが生まれ、より良い歯科界の未来を創ると思っています。