2025年5月号掲載
デジタルデンチャーの普及を目指す
※本記事は、「新聞クイント 2025年5月号」より抜粋して掲載。
IT技術でだれもが必要な医療を享受できる社会の実現に貢献したい
デジタル技術を駆使した次世代型の歯科医療サービスの提供を目指す株式会社フィールトラスト(野田真一代表取締役社長)は、2025年1月に医師と歯科医師による監修のもと「移動型歯科クリニック」の体験会を開催した。本欄では、代表を務める野田氏に新しい歯科医療支援モデルに不可欠な「デジタルデンチャー」の普及を目指す想いと展望についてうかがった。
野田:このたび、医師の木下水信先生と歯科医師の長縄拓哉先生にご協力いただき、「移動型歯科クリニック」という新しい取り組みを形にするため、阪神・淡路大震災から30年の節目となる本年1月に神戸で実証実験を行いました。今回の実証では、移動型歯科クリニックによる歯科健診だけでなく口腔内スキャナーや3Dプリンターを車内に搭載し、デジタルデンチャーの製作まで行いました。デジタル技術を活用することで生まれる新たな可能性と課題を見出すことができました。
移動型歯科クリニックは、被災地や高齢過疎地の歯科医療支援、健康寿命の延伸、歯科技工士不足など、さまざまな社会課題を解決する糸口となり、幅広い可能性を秘めています。
日本歯科医学会の調査結果では、要介護状態の高齢者のうち64.3%が歯科治療を必要としながらも、実際に受診できているのはわずか2.4%という現状があります。その背景として、歯科医療と介護の現場間での連携不足が大きな課題として挙げられます。介護現場では口腔ケアの重要性は認識されていますが、実際に歯科医療との連携が十分に行われていないケースがあり、結果として歯科治療の機会が失われています。
また、歯科技工士の減少にともない、義歯などの補綴装置の製作や調整に時間を要することも、受診のハードルを上げる要因となっています。これらの急増する高齢者歯科のニーズの対応として、新しいシステムを含めた歯科医療提供体制の構築が急務といえます。
従来の義歯の製作プロセスは、熟練した歯科技工士の手作業に大きく依存しており、1つの義歯を完成させるのに最短でも1か月ほどの期間が必要でした。しかし、デジタルデンチャーは、今まで手作業だった義歯の製作工程に3Dプリンターや口腔内スキャナーのデジタル技術を導入することで、従来の製作過程を3分の1まで削減し、製作期間も約1週間まで大幅に短縮することが可能となります。デジタルデンチャーの普及により、人材確保が難しい歯科技工士の負担を軽減するだけでなく、より多くの患者さんに高品質な義歯を迅速に提供できるのです。
弊社は、「口の健康から体の健康へ」という理念を掲げ、IT技術を駆使した次世代型歯科医療サービスを提供することで、社会全体の健康意識を高め、歯科界の発展と豊かな暮らしの実現に貢献していきます。今後も「だれもが必要な医療を受けられる社会」の実現に向けて、さらなる技術革新とサービスの拡充を行ってまいります。