萬人一語

真のメタルフリーの実現へ一歩前進

2022年6月号掲載

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2022年6月号掲載

真のメタルフリーの実現へ一歩前進

 歯科界だけでなく昨今話題となっている金銀パラジウム合金(歯科用貴金属)の高騰問題。国民のみならず歯科医療機関の経営に影響を及ぼすことから、日本歯科医師会は政府に安定供給を求める要望書を提出するなど対応に追われています。今回、年4回の随時改定に加えて5月に緊急改定が決定し、当座はしのげそうですが根本的な解決には至っていません。

 その解決策の1つとして歯科界では貴金属の代替材料であるCAD/CAM冠が注目を集めています。平成26年から保険収載されたCAD/CAM冠は小臼歯からスタートし、現在条件付きで大臼歯まで保険適用となっています。真のメタルフリー実現のためには、第二大臼歯まで適用拡大することが急務かと思いますが、金属と比較して咬合力の強度に対するエビデンス不足が課題としてあります。

 その課題の解決に向けて一歩前進する研究成果が、4月7日付の科学雑誌「PLOS ONE」に掲載されました。東北大学大学院歯学研究科の江草 宏教授らチームが行った大臼歯CAD/CAM冠治療における後ろ向きコホート研究では、いずれの大臼歯でも臨床的トラブルのリスクに有意差がないことが明らかになりました。結果として、CAD/CAM冠の保険適用範囲が今後すべての大臼歯に拡大されることへの期待と、真のメタルフリーの実現につながる可能性が示されています。

 歯科用材料の安定供給は大事ですが、新規医療技術の保険収載のために尽力している日本歯科医学会にも注目したいと思います。