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2015年7月11日

「第3回NPO法人 口から食べる幸せを守る会 全国大会 in 横浜」が開催

誤嚥性肺炎予防にも効果的な経口摂取について、多角的に考察される

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 さる7月11日(土)、神奈川県民ホール(神奈川県)において、「第3回NPO法人 口から食べる幸せを守る会 全国大会 in 横浜」(小山珠美大会長・理事長)が「広げよう!食べる幸せ」をテーマに開催された。当日は、医療関係者を中心に440名が参集し満席だった。会場では、基調講演、教育講演、特別講演、一般口演、イブニングセミナーなどが企画され、会の名称どおり、まさに「食べることを追求する場」となっていた。

 開会後、小山珠美氏(JA神奈川県厚生連伊勢原協同病院、看護師)による基調講演「「食べる幸せ」をサポートするための包括的支援スキル」が行われた。小山氏は、昨今、特に医療の現場で通法的にエビデンスがないまま患者さんに対して行われている絶飲食や床上安静が、誤嚥性肺炎などのリスクをより増長させている現状を指摘。そのうえで、入院患者においても早期に経口摂取を開始することが重要とし、そのために専門職に求められる正しい食事介助技術について具体例を示した。さらに、このたび氏が多職種とともに開発した、「口から食べるためのバランスチャート」を紹介。これは、患者さんが口から食べることを包括的・簡易的に評価するツール(包括的食支援ツール)で、本講演では、このチャートを用いたアプローチの有用性についても、自身がかかわり経口摂取が可能となった症例を交えて解説した。

 午後に開催されたシンポジウム「誤嚥性肺炎に挑むパート2~広げよう!食べる幸せ~」では、5名の演者が登壇。まず、若林秀隆氏(横浜市立大附属市民総合医療センターリハビリテーション科、医師)は嚥下障害に関する世界と日本の実情について、最新の論文をふまえて触れた。その中で氏は、「日本の臨床現場における嚥下障害の取り組みは世界的なレベルにあるが、英語で紹介した論文が非常に少ないため、ほとんど世界に伝わっていない。今後はエビデンスを増やしていくことが不可欠」と言及した。次に、前田圭介氏(玉名地域保健医療センター摂食嚥下栄養療法科、医師)が誤嚥性肺炎予防に向けた多職種による包括的ケアの有用性についてエビデンスをもとに説いた。続いて、榎本淳子氏(玉名地域保健医療センター医療連携室、看護師・社会福祉士)がさまざまな壁を乗り越えながらも実践している食支援に関する実際の取り組みについてユーモアたっぷりに話した。その後登壇した小山竜也氏(社会福祉法人なかつうみ会特別養護老人ホーム恵潮苑、主任介護士兼介護支援専門員)は、マンパワー不足に悩まされながらも、適切な食事介助技術を身につけ、多職種で連携をとることによって、胃ろうから3食経口摂取が可能となった症例を提示した。

 最後に、当事者のご家族が登壇。医療者によって食べる可能性を閉ざされた家族らのこれまでの苦悩や、「少しでも食べたい・食べさせたい」という本人・家族の願いを実現させた小山氏との出会いがありのままに紹介され、会場に大きな感動を呼んだ。