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2015年8月9日

第21回九州臨床再生歯科研究会講演会開催

「『基礎』が臨床の疑問に答える」をテーマに下野正基氏を迎える

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 さる8月9日(日)、パピヨン24ガスホール(福岡県)において、第21回九州臨床再生歯科研究会(自見英治郎会長)講演会が「『基礎』が臨床の疑問に答える」をテーマに、講師には下野正基氏(東歯大名誉教授)を迎えて開催された。通常の講演に加え、会員が臨床の症例を提示し、その症例の臨床での疑問に基礎的立場から下野氏が答えるという新たな試みがなされた。

 午前は、下野氏が「上皮性付着による歯周組織の再生」と題して講演した。歯周組織再生における上皮付着の意義での重要なポイントは、(1)歯周治療後に歯根面に形成された長い付着上皮は、時間の経過にともない短小化するので、上皮性付着は結合組織性付着に置き換わること、(2)長い上皮性付着は、正常の付着上皮と同様にラミニン-5とインテグリンα6、インテグリンβ4などの接着性タンパクによって接着しているので、臨床的には安定した治癒形態といえること、(3)4-METAレジンと再生上皮との間にも接着性タンパクが発現するため、この4-METAレジンは歯周外科に有用である可能性があること、などについて述べた。

 午後には本研究会の会員の豊嶋健史氏(香川県)、雑賀伸一氏(福岡県開業)、村川達也氏(福岡県開業)らの再生療法や自家歯牙移植を行った症例提示のあと、各々の症例での臨床での疑問を下野氏にぶつけた。歯周病による深い骨欠損に二度にわたりGTRを行った症例では、無細胞性セメント質がある根尖よりの部分と、有細胞性セメント質がある歯冠側よりの部分で、治癒形態に違いはあるのか? 再生療法時には暫間固定をして治療歯を動揺させないことが臨床医のなかでは大事といわれるが、病理的にもその根拠はあるのか? その暫間固定を除去する時期の基準は?などの疑問をぶつけた。また、上顎左側1が挺出、上顎11間に歯周病による骨欠損部にフラップをあけてルートプレーニング後に、骨補填材を填入して、治癒後に圧下を行った症例では、根面のルートプレーニングはどんな状態になるまでやるべきか? 骨面の掻爬やデコルチケーションは必要か? 再生後に圧下の矯正力を加える時期はいつが最適か?などの疑問をぶつけた。

 基礎と臨床の境界を越えた情報交換や交流という、本研究会の主旨を体現した講演会となった。