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2016年5月8日

EPSDC研修会1dayセミナー開催

「診断学」と「EBM」をテーマに

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 さる5月8日(日)、東京医科歯科大学特別講堂(東京都)において、EPSDC研修会(東京都開業、宮下裕志氏主宰)による1dayセミナーが開催された。本セミナーは、宮下氏が執筆に携わった『やさしい診査・診断学』『抜歯・小手術・顎関節症・粘膜疾患の迷信と真実』(弊社刊)の著者陣が一堂に会し、「診断学」と「EBM」をテーマに企画されたものである。

 はじめに、湯浅秀道氏(豊橋医療センター歯科口腔外科医長)が「EBMにおけるエビデンスとは」をテーマに登壇。「糖尿病の検査で重要なHbA1cは歯周病治療で改善するか」との設問を例に、都合の良い論文の都合の良い結果のみでエビデンスとされがちな問題点をやさしく紐解くとともに、診断・治療・予後・コストなどふまえ、できるだけ世界中の客観的に評価され、最新・標準とされたエビデンスを効率良く利用しながら、患者とともに考え、判断するプロセスこそEBMであると強調した。

 続いて、安藤彰啓氏(東京都開業)が「見えないものを診る -痛みの診断-」をテーマに講演。痛みの発生における3つの分類を紹介するなかで、歯科医師は「侵害受容性」か「心因性」かのいずれかに分類しがちであるが、「神経障害性」の痛みにも着目する必要があると述べるとともに、患者の主観的なものである痛みの訴えを診断・治療していくうえで、まずは知識を得ることの重要性を語った。

 3番目に、西山 暁氏(医歯大講師)が「それって顎関節症?」と題して、顎関節症(TMD)は雑音・痛み・運動制限の3大症状からなること、有病率は歯科の5~12%と1割ほどだがけっして少ない数ではないこと、自己寛解型で少し様子をみても良いこと、多因子の疾患であることなど、国際的な診断基準であるDC/TMDや日本顎関節学会のガイドラインを交えながら、TMDの診断に役立つ情報をわかりやすく紹介した。

 最後に、宮下氏が「歯原性の痛みの整理 ~意外な落とし穴~」との演題で講演。自院に痛みの解決に来院された患者のエックス線写真による複数の症例を題材に、「痛みの診断」は、疾患の診断だけに留まるのではなく、主訴、既往、期間、各種検査など患者の状況を幅広くとらえる必要があること、「噛んで痛い」という訴えには、根尖性歯周炎に限らず、歯肉炎、咬合負担など他にも原因があることを、各題材への実際の対応を示しながら解説。患者の痛みの特徴を確認し、適切に対処するためにも、治療のベースとなる診断学に基づく診断技術を習得することの重要性を強調した。

 セッション後の質疑応答では多数の質問が寄せられるなど、現場における歯科関係者の関心の高さがうかがわれた。