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2016年7月16日

第18回日本在宅医学会大会・第21回日本在宅ケア学会学術集会 合同大会開催

「在宅医療とケアの原点」をテーマに

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 さる7月16日(土)、17日(日)の両日、東京ビッグサイトTFTビル(東京都)において、日本在宅医学会(平原佐斗司大会長)および日本在宅ケア学会(辻 彼南雄学術集会長)による、第18回日本在宅医学会大会・第21回日本在宅ケア学会学術集会 合同大会が「在宅医療とケアの原点」をテーマに開催された。2日間にわたり、多数の講演のほか、ワークショップ、市民公開講座、会員発表(口演、ポスター)などが行われ大盛況であった。

 なかでも、2日目午前に行われた特別企画2「在宅医療における生活習慣病ならびに疾病管理基準―ガイドラインとの整合性と抱えている課題―」(共同企画:一般社団法人日本老年医学会)では、座長として葛谷雅文氏(名古屋大大学院医学系研究科老年科学講座〔老年内科〕教授)、飯島勝矢氏(東大高齢社会総合研究機構教授)、演者として飯島氏、梅垣宏行氏(名古屋大大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学)、荒井秀典氏(国立長寿医療研究センター)、冲永壯治氏(東北大加齢医学研究所老年医学分野)がそれぞれ登壇。

 それぞれ、高齢者の高血圧、糖尿病、脂質異常、肺炎の治療ガイドラインについて講演。75歳以上では、血圧を厳格に管理しすぎると認知機能が低下するJカーブ現象起きることがあることを指摘。糖尿病治療においても、75歳以上で厳格に管理をすると、血糖値が下がりすぎて認知機能障害サルコペニア・フレイルが起こりやすいという問題があるため、認知機能障害がある高齢糖尿病患者の血糖管理目標については、さらなるエビデンスが求められるとした。脂質異常の治療では下限はないが、高齢者の加齢による脂質異常による脳卒中などの動脈硬化性疾患のリスクは低いため、積極的介入は必要ないだろうとの意見も出された。肺炎と脳血管障害は表裏一体のため、脳血管障害の原因である生活習慣と肺炎も関係があるといえるが、既存のガイドラインと在宅医療現場の整合性にはギャップがあり、経験により補われている部分がおおいにあるため、在宅による肺炎診断と治療ガイドラインのエビデンスの確立が強調されていた。また、誤嚥性肺炎の予防ガイドラインがあるのは歯科のみとの情報提供もなされた。

 在宅医療については、後期高齢者に対する積極的治療の効果や予後についての、効果なしや治療不要といったエビデンスが求められているように感じられた。また、外来通院治療よりも在宅診療による治療には限界があるため、どの程度までの治療や介入をするべきなのか、というエビデンスやガイドラインが必要と在宅療養患者を診る多くの医療関係者が考えている。一度治療を始めたら途中で止める指針がないため、在宅でのEnd of Life(終末期)を考えた治療をする場合のガイドラインが早急に求められている。

 また、2日目午後に行われたシンポジウム20「在宅医療とテクノロジー」では、座長として泰川恵吾氏(東海大看護学部非常勤講師)、飯島勝矢氏、講師として星川安之氏(財団法人共用品推進機構専務理事)、吉藤健太朗氏(株式会社オリィ研究所代表)、坂本郁夫氏(パラマウントベッド株式会社取締役営業統括)、原 祐一氏(医師、福岡県医師会理事)がそれぞれ登壇した。

 星川氏は、在宅で使用する医療機器やケア、介護用品、日用品などの規格の国際化(シャンプーボトル側面にギザギザをつけるなど)の推進について、吉藤氏は障害者、入院患者、寝たきり患者などの分身コミュニケーションツール「OriHime」の紹介とその可能性について、坂本氏は「スマート™ベッドシステム」による患者の安全性の向上と業務の効率性や安全性の向上について、原氏は福岡県医師会が2014年より構築している診療情報ネットワーク「とびうめネット」について紹介した。

 とくに「OriHime」はベッドの上から社会参加できる分身ロボットということで、現在は障害者や寝たきり患者の使用を想定されているが、超高齢社会とテクノロジーの可能性が示唆された。また、当初の予想を裏切り「OriHime」を使うことによって、実際に外出し人と会う機会が増えるなど、インターネット上のコミュニケーションに留まらない発展をみせているのが興味深い。今後は、宇宙ステーションに「OriHime」を持ち込む構想も始まっており、障害者、寝たきり患者、高齢者などのさらなる社会参加を模索している。当日は、頚椎損傷のため首から下がまったく動かない番田雄太氏(オリィ社広報兼秘書)が「OriHime」を通じて盛岡より参加していたのも印象的であった。

 福岡県医師会の診療情報ネットワーク「とびうめネット」は、電子カルテなどのICTをまったく導入していない病院が福岡県内では34%あることがわかり、電子カルテなどをもっていなくてもネットワークに参加できるシステムとして、2014年に富士通株式会社の協力のもと構築された。参加医療関数は病院41か所、診療所148か所となっているが、残念ながら2016年7月現在、参加医療機関に歯科医院は1件も登録されていないようである。多職種連携や在宅医療推進の観点からも、将来的には歯科医院もネットワークに参加することが期待される。