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2016年12月17日

「『箸の文化』に対応した総義歯セミナー 第2回発表会」開催

全国から150名を集める盛況に

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 さる12月17日(土)、18日(日)の両日、博多メディカル専門学校(福岡県)において、「『箸の文化』に対応した総義歯セミナー 第2回発表会」が開催された。本発表会は、『箸の文化に適応した、前歯で噛み切れる 保険総義歯のススメ』(河原英雄ほか著、クインテッセンス出版刊)で解説されている総義歯調整法を学び、実践している歯科医師・歯科技工士の有志が開催したもの。会場には全国各地から約150名の参加者が集まり、盛況となっていた。

 まず17日には、「生活の医療」と題して秋元秀俊氏(医療ジャーナリスト、秋編集事務所代表)が3時間にわたり講演。18世紀末から19世紀初頭にかけて米国の歯科界で勢力をもったFocal Infection 説(中心感染説、口腔内の細菌感染が全身の各種臓器に器質的・機能的な障害をもたらすとされ、さまざまな病気の治療法として抜歯が行われた)の広がりとその否定について、同じく、18世紀中葉から約10年おきに戦争を経験してきた日本がこの71年間は戦争に触れておらず、それが戦争や感染症による死者が多かった時代の「まずは命を救う」医療から「よりよく生きる、生活のための」医療へのシフトを促した点について解説。そして、現在のEBMとNBMの関係性や、病期に応じて意味合いを変えるインフォームドコンセントの内容や患者ごとの「物語」の大きさを考える必要性などについて述べた。その上で、「患者さんの思いを汲み取る総義歯臨床に、現在の若手歯科医師が取り組みはじめている」「世界的にみて、無歯顎に公的給付で治療が行える国はまれ。そこにおいて、歯科医師の仕事は大きな意義をもっている」などとまとめた。

 また18日には、上述の趣旨のもとに集まった歯科医師33名が、「河原メソッド」による臨床例を1人あたり7分という持ち時間で次々に披露し、会場を盛り上げた。発表者は、西田哲也氏(宮崎県)/副島隆太氏(長崎県)/元島道信氏(熊本県)/上野陽子氏(福岡県)/塚本啓二氏(愛知県)/瀬戸大基氏(鹿児島県)/磯貝大洋氏(愛知県)/高森亜矢子氏(佐賀県)/神山 敬氏(熊本県)/疋田 涼氏(愛知県)/坂井清隆氏(宮城県)/副島太悟氏(長崎県)/馬場 聡氏(福岡県)/喜多 奏氏(兵庫県)/長坂健央氏(愛知県)/長田耕一郎氏(福岡県)/岡村 亘氏(大阪府)/藤井元宏氏(愛知県)/橘 一史氏(長崎県)/田部麻美氏(宮崎県)/園田晋平氏(福岡県)/岩本 繁氏(鹿児島県)/堀健太郎氏(広島県)/吹譯浩史氏(福岡県)/長友祐介氏(熊本県)/渡辺茂文氏(大阪府)/須貝彩帆氏(神奈川県)/湯川博之氏(福岡県)/嶋 肇氏(宮城県)/吹譯景子氏(福岡県)/高尾直宏氏(福岡県)/鈴木宏樹氏(福岡県)/尾崎洋美氏(大分県、以上、発表順)。その後会場では、「口蓋は口腔機能を鏡のように写す」と題して増田純一氏(佐賀県開業)が登壇。7,500枚もの写真を観察した経験から小児の歯列弓形態を「○型」「△型」「V型」に分類し、後者2種では不正歯列を生じやすいこと、また自身の調査により、「V型」の小児は2.24%存在することなどについて述べた上で、昨今、歯科以外の立場から噛むことの重要性についてアピールがなされていることの問題点について言及。「噛むこと、食べることの困難さを知らない立場からの広報が相次いでいる」「歯科医師として、口腔機能を見る目、捉える目をもってほしい」「初期のオーラルフレイルの診断指針が出されるよう願っている」などとした。