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2018年3月25日

日本医学会連合、「加熱式タバコと健康」シンポジウムを開催

加熱式タバコの最新知見が交換される

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 さる3月25日(日)、東京大学伊藤国際学術研究センター内・伊藤謝恩ホール(東京都)において、公開シンポジウム「加熱式タバコと健康―使用実態・科学的評価の現状と今後の課題―」(一般社団法人 日本医学会連合主催)が開催され、医師を中心に約260名が参集した。

 IQOS、glo、Ploom TECHといった加熱式タバコは、近年日本で爆発的に普及しており、2018年にはタバコ製品全体の20%を占めると推定されている。「(紙巻きタバコよりも)健康にいい」「空気を汚さない」などが人気の理由だが、はたしてそれは妥当な評価なのか? 有害性や二次曝露(受動喫煙)の危険性、一般の使用実態などについて、最新知見と今後検討すべき問題点が話し合われた。

 門田守人氏(日本医学会連合会長)の開会の辞のあと、遠山千春氏(健康・環境国際科学技術国際コンサルティング主幹、東大名誉教授)がシンポジウムのねらいを概説。
 その後、まずは欅田尚樹氏(国立保健医療科学院生活環境研究部部長)が「加熱式タバコに含まれる有害物質」について講演した。氏の研究によれば、加熱式タバコから発生するエアロゾル中の有害物質の濃度は紙巻きタバコに比べ低減されているものの、有害成分の低減はリスクの低減に直結するものではなく、今後の第三者機関の評価とモニタリングの継続が必要とのことだった。

 続いて、大和 浩氏(産業医科大教授)が登壇し、「加熱式タバコによる室内汚染:呼気に含まれるエアロゾルの実態」の演題で講演。「まわりの空気を汚さない」というのも加熱式タバコが人気を博す理由のひとつだが、IQOSなど各加熱式タバコが放出する微小粒子状物質(PM2.5)の濃度を室内にて計測したところ、副流煙は発生しないものの、受動喫煙に相当する二次曝露により室内が汚染されることが確認された。

 また、田淵貴大氏(大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部副部長)は、「日本における加熱式タバコ使用の実態」を報告。自身が実施したインターネット調査(3年間の追跡調査)をもとに、加熱式タバコの使用が増え続けている現状や、深夜バラエティ番組での宣伝や製品デザインなど、IQOSが日本でブレイクした理由を分析した。

 次に、瀬山邦明氏(順天堂大先任准教授)が「臨床における加熱式タバコの問題―呼吸器・アレルギー疾患の観点から―」をテーマに講演。従来の紙巻きタバコ(燃焼式タバコ)ですでに十分なエビデンスが構築されている知見をふまえ、加熱式タバコによる呼吸器・アレルギー疾患のリスクを検討した。
 
 さらに、中村正和氏(地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター長)が「ニコチン依存の観点から―加熱式タバコ使用者へのアプローチ―」について解説。加熱式タバコは、主流煙のニコチン収量は紙巻きタバコの7~8割程度でニコチンの吸収動態も類似している。しかし、使用時のニコチン血中濃度は紙巻きタバコよりも低く、そのため喫煙者の満足感も低いという。

 最後に、望月友美子氏(日本対がん協会参事)が「加熱式タバコ製品に対する規則―国際的な動向と我が国への示唆―」をテーマに講演。タバコ産業の発展に対し、規制が遅れ多数の死者を出してきた過去70年の歴史を踏まえ、「加熱式タバコでも同じ過ちを繰り返すのか?」と苦言を呈した。

 演者発表後には質疑応答が行われ、加熱式タバコを使用している患者への禁煙アプローチのしかたなど、臨床に結び付いた質問が会場から多く投げかけられた。1時間の質疑応答でも演者が答え切れないほどの質問が寄せられ、加熱式タバコ対策への関心が見てとれた。
 その後、シンポジウムは、岸 玲子氏(日本医学会連合副会長)による閉会の辞で閉幕。終了後も演者の前には質問をする参加者たちが列をなした。