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2019年8月4日

深井保健科学研究所第18回コロキウムが開催

「New Public Healthと歯科口腔保健」をテーマに

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 さる8月4日(日)、ステーションカンファレンス東京(東京都)において、深井保健科学研究所第18回コロキウム(深井穫博所長)が「New Public Healthと歯科口腔保健」をテーマに開催され、疫学や公衆衛生を専門とする大学関係者、行政関係者、臨床家らが多数参集し盛会となった。

 冒頭、深井氏(埼玉県開業)が開会の挨拶に立ち、「誰もが取り残されることなく健康を享受できる世界を目指す持続可能な開発目標において、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)とNCDs の予防が位置づけられている。グローバルに進む高齢化と疾病構造の変化のなかで、社会保障制度の維持に向けてマルチセクター・マルチアクターが健康課題に取り組まなければならない。この取り組みには社会疫学の研究の進展も受けて旧来の仕組みにとらわれないイノベーションが必要であり、このような観点から今回のコロキウムでは、公衆衛生における医療の位置づけとその役割について議論を深めたい」と開催主旨を述べた。

 午前の部では、まず神原正樹氏(神原グローバルヘルス研究所所長)による特別講演「口腔保健の客観的評価と医療の新展開」が行われた。人生100年時代における歯科医療では、従来の“疾病”を対象とした評価ではなく、“健康”を評価することが重要としたうえで、氏が特許を取得しているいくつかの検査法を紹介した。つづくシンポジウム1「公衆衛生と多分野連携-口腔と栄養」では、安藤雄一氏(国立保健医療科学院)、中西明美氏(女子栄養大准教授)の座長のもと、花田信弘氏(鶴見大教授)、深井氏、中西氏がそれぞれ講演。口腔と栄養との関連についてそれぞれの取り組みを紹介した。

 午後の部では、恒石美登里氏(日本歯科総合研究機構)、上野尚雄氏(国立がん研究センター)の座長のもと、シンポジウム2「パーソナルヘルスレコードとビッグデータ」が行われ、島本大也氏(京大)、岡本悦司氏(福知山公立大教授)、安藤氏が講演。なかでも島本氏は、パーソナルヘルスレコード(personal health record:以下、PHR)とは個人の健康に関する記録を一元化して管理するものであるが、定義自体があいまいなまま乱立している状態であることを述べたうえで、PHRの可能性や、氏らが進める「ライフロングPHR京大モデル」について紹介した。その後、指定発言として恒石氏が登壇し、「歯科口腔保健分野におけるNDB 利活用の展開と課題」と題して講演した。

 つづいて、宮崎秀夫氏(明倫短期大副学長)、深井氏の座長のもと、シンポジウム3 「公衆衛生と医療」が2部構成で開催された。Part1では、深井氏、松山祐輔氏(医歯大)、嶋崎義浩氏(愛院大教授)が、つづくPart2では竹内研時氏(名大准教授)、野村義明氏(鶴見大准教授)、宮崎氏がそれぞれ講演した。その後、指定発言として若栗真太郎氏(滋賀県健康寿命推進課)が「健康寿命日本一の滋賀県の経験から学ぶ公衆衛生と医療」と題して登壇。「健康長寿日本一の理由は定かではないが、滋賀県民は喫煙率が低い(全国1位)、食塩摂取量が少ない、スポーツする者が多い、アルコール摂取量が少ないといった要因が、がんや脳血管疾患による死亡数減少に寄与している可能性がある」と述べた。

 最後に、深井氏が登壇し、近日中に深井保健科学研究所のホームページ(http://www.fihs.org/)において、コロキウム提言2019「公衆衛生における医療の役割」を掲載予定であると述べ、閉会した。