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2019年11月30日

日本歯科審美学会第30回学術大会を開催

「笑顔をはぐくむ明日への医療」をテーマに

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 さる11月30日(土)、12月1日(日)の両日、昭和大学上條記念館(東京都)において、日本歯科審美学会第30回学術大会(真鍋厚史大会長、藤澤政紀理事長)が「笑顔をはぐくむ明日への医療」をテーマに開催され、約800名が参集する盛会となった。以下、主要な演題について概説する。

(1)Sister Academy Session「Cementation of Ceramic Restorations to Optimize Aesthetics and Function」(中村隆志座長〔大手前短期大ライフデザイン総合学科〕)
 本セッションでは、日本歯科審美学会のSister Academy(姉妹学会)であるAACD(American Academy of Cosmetic Dentistry)を代表して来日したDr. Saiesha Mistry(インド開業)が標記演題で登壇。ムンバイ大学を1991年に卒業後、Eastman Dental Hospital(イギリス)にて保存歯学修士号、ニューヨーク大学(米国)にて審美歯科学を修めたDr. Mistryであるが、今回は標題のとおり補綴・修復装置の接着について概説。シリカベース/ノンシリカベースのセラミックそれぞれにおける注意点や、接着と合着の基本的な相違、また補綴・修復装置の形態に応じた対応などについて、症例を多数交えながら示した。

(2)アドバンストセミナー「審美性に配慮した外科的矯正治療」(代田達夫座長〔昭和大歯学部口腔外科学講座顎顔面外科学部門〕)
 本セミナーでは、「外科的矯正治療を施行した顎変形症患者における美的調和の獲得」と題して齋藤 功氏(新潟大大学院医歯学総合研究科歯科矯正学分野)が、「顎変形症の治療-機能性・審美性と安定性におけるチームアプローチ-」と題して高木多加志氏(東歯大千葉歯科医療センター口腔外科)が、そして「クライアントに悦ばれる顔貌形態改善を目指したSurgery-First / Surgery-Early アプローチによる外科的矯正治療」と題して渡辺頼勝氏(東京警察病院形成美容外科)がそれぞれ登壇。いずれの演者も、顎変形症や口唇口蓋裂の術後変形症例に関し、咬合・機能を重視したセファロ分析や術前シミュレーション、骨切り術に入る前の術前矯正治療、また顎骨の切断や移動がもたらす軟組織への審美的影響などについて、豊富な症例とともに示した。

(3)特別講演「歯科治療への東洋医学の応用~体の中からも美しく~」(真鍋厚史座長)
 本講演では、砂川正隆氏(昭和大医学部生理学講座生体制御学部門)が標記演題で登壇。歯科東洋医療の適応範囲やその現状、また日本歯科医師会発行の「歯科関係薬剤点数表」に収載されている11方剤(立効散、半夏瀉心湯、黄連湯、茵蔯蒿湯、五苓散、白虎加人参湯、排膿散及湯、葛根湯、芍薬甘草湯、補中益気湯、十全大補湯)の紹介などを行ったうえで、今後の歯科東洋医学の普及のために教育の充実、歯科における漢方薬の使用指針の確立、そして歯科で利用できる方剤の増加、を行っていきたいとした。

(4)理事長講演「これまでの30年に立脚したこれからの日本歯科審美学会」(真鍋厚史座長)
 恒例の理事長講演では、藤澤理事長が標記演題で登壇。今後の日本歯科審美学会として今目指していることおよびこれから目指したいこととして、日本歯科医学会専門分科会への登録、認定医・認定士の増加、専門医制度の確立、学術大会参加者の増員、歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士のさらなる連携、歯科医学会・歯科医学会連合・歯科専門医機構との連携、セミナーのよりいっそうの充実、の7点を挙げてそれぞれ解説した。

(5)学術講演委員会企画シンポジウム「ピンクエステティックスを極める」(佐藤洋平座長〔鶴見大歯学部有床義歯補綴学講座〕、齊木好太郎座長〔ラボラトリー・オブ・プリンシピア〕)
 本シンポジウムでは、「前歯部修復治療における個性美の獲得」と題して都築優治氏(Ray Dental Labor)が、「The Pink Esthetics ~成功に導く治療戦略について~」と題して瀧野裕行氏(京都府開業)がそれぞれ登壇。前者では歯科技工士の立場からみた歯頚ラインの左右対称性の確保やジンジバルフレームワークの確立などが、また後者では歯科医師の立場から、ピンクエステティックの確保のために必要な各種術式や歯肉退縮を生じやすいフェノタイプへの注意、また補綴、外科処置、および矯正治療などを組み合わせる際に考慮する治療のストラテジーなどについて、多数の動画、写真を用いて供覧した。

(6)アドバンストセミナー「補綴」(小峰 太座長〔日大歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座〕)
 本セミナーでは、「デジタル補綴時代における審美歯科治療の戦略」と題して田中晋平氏(昭和大歯学部歯科補綴学教室)が、「全部床義歯におけるデジタルデンティストリー」と題して金澤 学氏(医歯大大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野)が、そして「審美修復治療におけるデジタルデンティストリーの今から未来まで」と題して北原信也氏(東京都開業)がそれぞれ登壇。田中氏と北原氏は主にクラウン・ブリッジ領域について、金澤氏は全部床義歯領域について最新のデジタルデンティストリー事情について解説。いずれの演者もIOS(Intra Oral Scanner、口腔内スキャナー)を積極的に活用しており、そのことが歯科技工室だけのデジタル化から、歯科診療のワークフロー全体のデジタル化につながるという論調で一致していた。また、クラウン・ブリッジ領域ではモノリシックレストレーションをいかに活用するかが重要であり、この点については田中氏、北原氏ともに詳説された。

 このほか、会場では多数のメーカー展示やポスター発表が行われ、いずれも盛況となっていた。なお、来年度の学術大会は、きたる2020年10月3日(土)、4日(日)の両日に、奈良春日野国際フォーラム(奈良県)において、日本接着歯学会第39回学術大会と合同で開催されるとのこと。