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2020年9月13日

令和2年度日本歯科理工学会シンポジウム/関東地方会夏期セミナー(併催)が開催

「歯科理工学におけるデジタルテクノロジーの重要性」をテーマにWeb開催

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 さる9月13日(日)、令和2年度日本歯科理工学会シンポジウム/関東地方会夏期セミナー(併催)(日本歯科理工学会主催、早川 徹理事長)が「歯科理工学におけるデジタルテクノロジーの重要性」をテーマに、Web上で開催された。以下に、各演題の概要について示す。

(1)「歯科理工学におけるデジタルテクノロジーの重要性」(河合達志氏、愛院大歯学部歯科理工学講座)
 本演題では、愛知学院大学で行われているデジタルテクノロジー関連の学生教育における重要項目として、(1)Pythonプログラミング、(2)電子工作技術、(3)汎用3Dソフトによるモデリング、および(4)人工知能の体験、の4点を挙げ、それぞれについて詳説。Python言語によるRaspberry Pi(Raspberry Pi Foundation)のコントロールや、外部装置のコントロールのための電子工作(熱電対による温度測定など)、3DCGソフトウェア「Blender」(Blender Foundation)による歯冠形態のモデリング、そしてこちらもPython言語を用いたディープラーニング(深層学習;人工知能の発展を支える技術のひとつ)の実習など、もはや歯学部といえどもデジタルテクノロジーを修めることが欠かせなくなっていることが示された。

(2)「歯科用金属材料におけるAdditive Manufacturingの最前線」(野村直之氏、東北大大学院工学研究科材料システム工学専攻)
 本演題では、(1)Additive Manufacturingとは、(2)歯科用金属材料におけるAdditive Manufacturing、(3)これまでの金属積層造形への取り組み、および(4)将来展望、の4点が語られた。Additive Manufacturingをめぐる歯科独特の状況(レーザー出力や造形ステージのサイズ、スポットサイズ、造形雰囲気など)や用いられる金属材料に求められる物性、海外および日本国内における材料研究の現状などを示し、従来から続く新しい歯科用合金の開発と、これから世界的に拡大・浸透していくAdditive Manufacturing技術への適応を連続的に検討していく必要がある、と締めくくった。

(3)「デジタルデンティストリーの最前線と今後」(三浦宏之氏、医歯大大学院医歯学総合研究科摂食機能保存学分野)
 本演題では、三浦氏がこれまで携わってきたクラウン・ブリッジ領域のCAD/CAMのこれまでの歴史と近未来までの流れを概観。従来の精密鋳造は高い精度をもたらした一方で鋳造収縮や偏析などの問題があったことをふまえてセラミック材料のためのCAD/CAMが進化してきたことについて、黎明期のCerconシステムやDCSスマートフィットシステムの使用経験や当時の加工精度について、また最近のCAD/CAM用材料のシェアやジルコニア材料の進化(透光性やグラデーションの付与など)、および光学印象採得装置の現状などについて述べる総論的な内容とした。

(4)「チタンによる歯冠修復の将来」(小泉寛恭氏、日大歯学部歯科理工学講座)
 本演題では、令和2年度診療報酬改定において歯科用鋳造用チタンが全部鋳造冠による大臼歯の歯冠修復を行う場合に保険収載されたことをふまえ、その経緯および特徴について解説。すでに保険収載されているコンポジットレジンのCAD/CAM冠が適応できない臨床的歯冠長が短い症例やクリアランスが不足する症例、また咬合力が強い症例において、コスト面も踏まえてたいへん有用であるとした。また、このたびの保険収載における医療技術提案書を日本歯科理工学会と日本歯科補綴学会がともに作成した経験をふまえ、どういった書類や内容が必要となるのかについても示された。