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2021年2月11日

日本デジタル歯科学会、2020年度冬季セミナーをWEBにて開催

「歯科における医工連携の現在そして未来」をテーマに

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 さる2月11日(木)から14日(日)にかけ、一般社団法人日本デジタル歯科学会(末瀬一彦理事長)による2020年度冬季セミナーが、同学会Webサイト内でオンデマンド配信された。同学会では例年、年に1回の大規模な学術大会に加えて「夏期セミナー」「冬季セミナー」をそれぞれ開催し、時宜を得たテーマや演者を取り上げて好評を博している。以下に、配信された3題の概要を示す。

1)「歯牙計測用 簡易OCTスキャナー」(椎名達雄氏、千葉大大学院工学研究院先進理化学専攻)
 本演題では、産業分野に加え医療分野では眼科を中心に応用が進むOCT(Optical Coherence Tomography、光干渉断層撮影)の歯科への応用について研究を進める椎名氏が登壇し、(1)研究の背景と目的、(2)OCTの原理、(3)氏が開発したシステムの特徴、(4)計測例の紹介、および(5)まとめの5パートに分けて論じられた。(1)としては、眼科向けの高価な装置(1,000~1,500万円程度)を用いずに産業用OCTをベースとすることで歯科専用の小型低価格な装置を目指すとし、(3)では(1)の考え方をもとに、医科用で主流となっている波長掃引レーザ光源を用いたFD-OCT(Fourier-Domain OCT、フーリエ領域OCT)ではなくより構造が単純で安価なTD-OCT(Time-Domain OCT、時間領域OCT)を基に開発した実例を紹介。独自の回転リフレクターによる光路長可変機構やアンリツ社の協力による専用光源の採用、またハードウェア演算を採用したことで、B6判サイズでバッテリー駆動も可能な装置の開発に至った道筋を示した。(4)ではこの装置を用いた撮影例が示され、エポキシ模型や抜去歯牙を用いたう蝕検知の例や、歯肉模型を介した状態での根面形態のスキャンの例などについて示した。最後のまとめでは、臨床応用や実際の操作性について工学側の目線だけではなく歯科側の意見が必要であるという趣旨から、生体を用いたサンプルデータの収集や実際の口腔内での使い勝手、また歯科側が何をOCTで見たいのか、といったニーズを収集することが今後求められるとした。

2)「画像支援診断のためのAIの基礎と歯科領域への応用」(藤田広志氏、岐阜大工学部電気電子・情報工学科)
 本演題では、AI(Artificial Intelligence、人工知能)、中でもこれを用いたCAD(Computer-Aided Diganosis、画像診断支援システム)に関する研究に長年取り組んでいる藤田氏が登壇し、(1)AIとは、(2)CADの歴史概観、(3)ディープラーニング、(4)AIが人間に「勝利」、(5)データベース、(6)CADの進化・多様化、(7)AI-CADの商用化、(8)AIの倫理問題、および(9)AI-CAD新時代、の9パートに分けて論じられた。まず、藤田氏を研究代表者とする文部科学省地域イノベーション戦略支援プログラム(都市エリア型)岐阜県南部エリアにおける「歯科領域における画像診断支援システムの開発」(2009年6月~2012年3月)によってパノラマX線写真を用いた骨粗鬆症検出、同じく頚動脈石灰化の検出、および上顎洞炎の検出を行えるシステムを開発したことを紹介した上で、CADの歴史について概観。CADの概念は、1960年にLusted LBによって胸部X線写真の正常・異常の自動分類を行うことが初めて提案されたことを皮切りに、1968年には鳥脇らが論文「電子計算機による胸部X線写真の病巣陰影識別に関する基礎的実験」(医用電子と生体工学 1968;6(3):207-214)を発表するなど国内外での研究が進んだ後、1998年に世界初のマンモグラフィー診断支援用の商用CADとしてFDA(Food and Drug Administration、米国食品医薬品局)の認証を受けたことを紹介したうえで、現在では主に医科領域において胸部X線、マンモグラフィー、内視鏡画像に対し実用化されていることを紹介。さらに、大量の画像を用いて機械学習を行うディープラーニングの原理や上記以外の歯科用CAD(歯種の判別、う蝕の検知、インプラントメーカーの判別、歯周病の重症度判定など)に関する研究の紹介、さらには昨今のCOVID-19に関連するCAD(患者の咳の音声からの診断、胸部CT画像からの診断)についても紹介し、現在の検査法よりも迅速な結果が得られるものとして期待されるとした。そして締めくくりとして、「伝統的な歯科医師の役割がAIに置き換えられるのかという危惧があるが決してそうではなく、AI-CADを正しく理解し取り入れることにより、多くの課題は残るもののこれまで以上に患者を助けていけるだろう」とした。

3)「CAD/CAM冠の保険適応拡大 ―前歯部へ―」(小峰 太氏、日大歯学部歯科補綴学第3講座)
 「緊急企画 前歯CAD/CAM冠特集」の副題を冠した本演題では、標題のとおり2020年9月に区分C2として新規に保険適用となった前歯部CAD/CAM冠について、(1)保険導入の背景、(2)適応症、(3)臨床ステップでの注意点の3点について解説。(1)では、2014年の小臼歯部CAD/CAM冠から現在に至るまでの流れや前歯部CAD/CAM冠が期中導入された経緯、また前歯部CAD/CAM冠用レジンブロック(CAD/CAM冠用材料〔Ⅳ〕)の所要性質やマルチレイヤーの効果などについて述べた。また(2)では、これまでのレジン前装冠と強度の比較や金属アレルギー症例への適性、また歯冠高径やクリアランスの量、そして支台歯の色調などを考慮した前歯部CAD/CAM冠の適応・非適応について示された。そして(3)では、これまでの鋳造歯冠修復とは異なる前歯部CAD/CAM冠向けの支台歯形態や、CAD/CAM冠ではセラミックスに準じた接着前処置と接着性レジンセメントによる接着が必要となることを踏まえ、その手順が解説された。

 その他、協賛企業6社のPR動画も配信されており、最先端の医科・歯科関連デジタル技術にふれる機会となっていた。