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2022年6月5日

第5回国際歯科医療安全機構総会・学術大会が開催

「総合歯科学インプラント臨床と医療安全 ―患者安全を通して歯科医療を考える―」をテーマに

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 さる6月5日(日)、一般社団法人国際歯科医療安全機構第5回総会・学術大会(伊東隆利大会長、瀬戸●(かん)一[●は日へんに完]理事長)が、熊本県歯科医師会館を会場にWeb配信を基本として開催された。

 大会テーマに即したシンポジウム「インプラント臨床と医療安全・患者安全・医療倫理」では、はじめに「インプラント関連外科手術における安全と倫理」と題して矢島安朝氏(松本歯科大病院口腔インプラントセンター長)が講演。日本顎顔面インプラント学会学術委員会での「インプラント手術関連の重篤なトラブル」の2009~2017年の9年間の調査から、発現頻度が高いものとして下歯槽神経損傷、上顎洞炎、上顎洞内インプラント迷入であったことを報告。歯科医療者として、これらは重篤な医療事故との認識をもつこと、患者の全身状態を適切に把握することの重要性を指摘し、CT画像による的確な診断と治療計画、ガイドシステムなどの利用、教育や研修の充実、患者が歯科医師を選択できるシステムの構築などの事故防止に向けた展望を述べた。

 続いて「上部構造、設計、材質からみた医療安全・医療倫理」と題して澤瀬 隆氏(長崎大教授)が、補綴医の立場から講演。技工物の衛生管理の問題、近年増えているテーパージョイントインプラントにおける亀裂や沈み込みの問題などを詳述するとともに、インプラントは天然歯とは違う病気の治療と認識し、リカバリーできる体制をつくることが重要と述べた。

 最後に「メインテナンスからみた医療安全・医療倫理」と題して、和泉雄一氏(総合南東北病院オーラルケア・ペリオセンター長) から、インプラントの失敗につながるインプラント周囲病変について解説。インプラント周囲粘膜の細菌に対する抵抗力は天然歯周囲のより弱く、また天然歯の歯周炎とは異なる細菌の組成であること、歯周炎の既往以上に、埋入後も健全な歯周組織を保つのがより重要であることなどを紹介し、インプラントを長期に維持するうえでのメインテナンスの意義を強調した。

 シンポジウム「コロナ対策の現実と将来像」では、最初に「歯科医療現場から」伊東隆三氏(伊東歯科口腔病院長)および「医科医療現場から」胃腸科外科の院長である小堀恭裕氏(熊本県開業)がそろって登壇し、2年余にわたりスタッフの検査や陽性者への対応、院内での感染症対策など、連携して取り組んできた伊東歯科口腔病院のコロナ対策について紹介した。

 続いて山内健介氏(東北大病院特命教授)より「歯科診療でのエアロゾル管理」と題し、エアロゾル分布などの分析から、前歯部でのタービンや超音波切削機器の使用時はエアロゾルの発生が多いこと、口腔外バキュームの使用で飛沫範囲の減少が認められたことなどを報告した。

 最後に「新興感染症にどう対応」と題した講演で、小林隆太郎氏(日本歯科医学会総務理事)は、今回のCOVID-19にとどまらず、今後も森林開発や温暖化などの影響で新たなウイルスによる新興感染症の発生が生じるおそれがあると指摘し、今回のCOVID-19の経験を新たな歯科医療環境対策への入口戦略として取り組んでいくべきと強調。新興感染症について正しく理解するとともに、歯科ではこれまで重視してきた標準予防策や感染経路対策を引き続き徹底することが重要と述べた。