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2022年11月3日

第13回Shurenkai web SOUKAI 2022開催

「目指せ!無調整装着 ホントは知っててほしい技工の世界」をテーマに

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 さる11月3日(木)、第13回Shurenkai web SOUKAI 2022(Shurenkai主催、中村健太郎主宰)が、「みんなで目指そう! 患者満足度を勝ち得る補綴歯科治療を」のスローガンのもとに「目指せ!無調整装着 ホントは知っててほしい技工の世界」をテーマとしてWeb開催された。例年、11月3日に愛知県で開催されてきた本会だが、今回も昨年、一昨年に引き続きWeb開催となった。

 冒頭で中村氏はまず、補綴治療における歯科技工/歯科技工士の基本とその立ち位置について言及。修練会が目指す補綴治療の精度、そして患者満足度獲得のためには、歯科技工士が歯科医師に対して「何をしてほしいのか」「何をしてほしくないのか」の本音を明らかにすることが重要であり、「今日はパンドラの箱を開ける」と述べて開会の挨拶とした。以下に、それぞれの演題の概要を示す(講演順)。

(1)Re:brush up(松前 団氏、歯科技工士、LAGUZ SOWULO Dental Craft)
 本演題では、無調整装着を可能にするためのキーワードとして支台歯形成、印象採得、咬合採得材料、そして咬合採得の手技の4点を挙げたうえで、特に支台歯形成、印象採得にかかわる問題点について解説。支台歯形成に関しては、各機能咬頭の外斜面のクリアランスが少ない症例が多いことや、形成面がスムーズでないためにワックスアップの着脱が行えなくなる症例の問題点などについて示した。また印象採得に関しては、「なめられ」が生じているシリコーン印象面の特徴や、フィニッシュラインが歯肉のラインと混在し不明瞭になっている例などについて示した。また、歯科技工士の立場からも口腔内における支台歯形成について学ぶためにファントム模型で実習を行った体験談についても述べ、実際には難しいことばかりであることを実感したとし、歯科医師にもひたすら上手くなるまでトレーニングを積み重ねていただきたいとした。

(2)「補綴学会登録技工士と取り組む補綴臨床 ―技工士から見た、これはしてほしくない! これはしてほしい!―」(黒松慎司氏、歯科技工士、Dental Digital Science)
 本演題では、Shurenkaiに所属の歯科技工士のなかから、日本補綴歯科学会の登録歯科技工士である16名に、臨床の場で歯科医師に「これはしてほしくない!」「これはしてほしい!」事柄をアンケート調査した結果を発表。その中で、全員が挙げたのが印象採得、作業用模型、咬合採得の3点に関する問題であったとし、それぞれの回答例に加え、演者がもっとも印象深いと感じた回答を「MVP」として紹介。印象採得に関しては「やってほしくないことは、いい加減な印象を採らないでほしい、ということ。やってほしいことは、正確な印象を採って正確な模型を作ってもらうこと。私たち歯科技工士には模型しかなく、その中にある情報で補綴装置を製作しなければならない。(中略)何百例の模型を見てきた歯科技工士として、模型を見ただけでその先生の実力は見当がつく。ぜひ、手を抜かないでください」という回答を、また、歯科医師の対応という項目の中でのMVP回答としては、「再印象、再形成、再バイトの依頼時に嫌な顔はしないでほしい。どれもたいへんなことなのでやりたくない気持ちはわかる。こちらもたいへんなことをお願いしている点は理解しているので、よほど無理な時しかお願いはしない。そのうえで、製作できないものはできない。無理して作っても良い結果は得られない。なぜできないのか、何がいけないのか、どこを直せばいいのか、話し合いをしましょう」という回答を紹介。その他にも、治療の流れについて歯科技工士に尋ねてくる歯科医師の態度や、納期(製作期間)を考慮しない技工指示、そしてそれがもたらす歯科技工士の長時間労働など、歯科医師にとっては耳の痛い問題についてあえて取り上げ、建設的な問題提起を行った。

(3)「認定医取得によってみえた補綴歯科治療の成功に必要なこと」(西原 裕氏、香川県開業)
 本演題では、中村氏の指導のもとで2020年に日本補綴歯科学会の補綴歯科認定医の認定を受けた西原氏が登壇し、認定に至るまでのエピソードを披露。2019年に同学会の修練医を取得後、ステップアップのために認定医を目指すなかで、特に提出用の10症例の資料作成に苦心した様子や、中村氏とのやり取りによって得られた学びについて述べた。また、そのなかから3症例をピックアップして示し、すでに症例は用意できていたが、その説明に苦労する演者に対し、「治療前に診断して医学的な適応性、医術的正当性に則って治療計画を立てていれば、ただそれを書くだけでよかっただろう」と述べた中村氏の言葉や、歯科技工士や歯科衛生士とも連携して治療にあたることの重要性、そして補綴歯科治療を遂行するための十分な理論化と具現化(必要な機器・器材への設備投資、できれば院内歯科技工士の雇用)、そして術前・術中の指導医とのカンファレンスなどについて挙げ、それぞれが補綴歯科治療の成功に必要であることを示した。

 なお、各演題の合間には中村氏が演者らに対してふみ込んだ質問を投げかけ、その内容をいっそう実りあるものとしていた。また、「Webデンタルショー」と題した、協賛企業による広告動画の放映も充実していた。