社会|2025年7月8日掲載

「アブフラクション“仮説”の現在地」「エンド難症例への対応」などをテーマに

2025年 第44回臨床歯科を語る会が開催

2025年 第44回臨床歯科を語る会が開催

 さる7月4日(金)から7月6日(日)の3日間、リンクフォレスト(東京都)において、2025年 第44回臨床歯科を語る会(斎田寛之実行委員長)が開催された。本会は歯科臨床の研鑚を目的に1981年に発足し、 1年に一度、全国各地のスタディグループが一堂に会して、歯科におけるさまざまな分野についてディスカッションを行う会である。

 2日目の全体会では、黒江敏史氏(山形県開業)により「アブフラクション“仮説”の現在地~熱狂の20世紀、検証の21世紀~」のテーマで講演が行われた。NCCLやアブフラクションといった基本用語を押さえたうえで、アブフラクションの肯定と否定の双方の論理などにふれ、自身の考えを解説。氏は、卒後間もない頃はアブフラクション仮説にのめりこみ、当初は肯定派の研究者として実証を目指していた。しかし、アブフラクション仮説の元となるGrippoの論文やLee & Eakleの仮説について、それを証明する前向きな臨床的な根拠はいまだ出てきていない。また2009年の開業後、自身の臨床からもそれを裏付けるような結果は得られていないなどといった理由から、現在は否定的な立場にいると語った。講演の最後に、「もしアブフラクションの前向きな経過観察症例をもっている方がいれば教えてほしい」と会場に投げかけた。

 3日目の全体会「エンド難症例への対応~専門医・GP それぞれの見極め~」では、それぞれ違う立場からエンドについて解説するという趣旨のもと、千葉英史氏(千葉県開業、火曜会)、倉富 覚、氏(福岡県開業、北九州歯学研究会)、和達礼子氏(東京都開業)による講演が行われた。まず千葉氏が、根尖病変のある失活歯について多数の症例を供覧し、できる限り侵襲を少なくするという考え方に則った処置の説明や、反省症例の原因の考察を行った。続く倉富氏は、根管の水平的拡大や未処置根管の探索方法、可能な限り外科的歯内療法への移行を防ぐための非外科処置のポイントなどを解説。そして和達氏は、歯内療法専門医の立場から開業医が気づきづらい難症例を4つ示し、それぞれの対応がなぜ難しいのかを説いた。その後ディスカッションが行われ、全大会の最後には3名の登壇者に観客からスタンディングオベーションが送られた。

 このほか、筒井純也氏(東京都開業、火曜会)が座長を務めた会員発表や、3つのテーマで催された分科会「咬合崩壊症例の治療ステップ~治療用義歯をどう活用するか~」「今あらためて 自家歯牙移植を考える」「成長期の上顎前突に対する早期矯正治療」、“夜の部屋”と称した「若手症例相談の部屋」「谷口道場(歯周基本治療を極める)」、「私のオススメ あれこれ」、6題のポスター発表などが行われ、熱気に包まれた会となった。

 なお、次回の2026年 第45回臨床歯科を語る会は、斎田実行委員長(埼玉県開業、火曜会)の下、東京都内で開催予定である。

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