2023年4月9日掲載
各グループから総勢約150名を集め盛会に
「JACD」「咬合療法研究会九州支部」「前歯でも噛める入れ歯研究会」合同例会開催
本合同例会は、前歯でも噛める入れ歯研究会主宰の河原氏が、同研究会の設立10周年を機に新たな風を起こすべく企画したもの。患者の生活習慣の改善やスプリント療法、咬合面形態修正および修復による包括的歯科治療を主とするJACDおよび咬合療法研究会九州支部と、噛むことができず困っている義歯をリマウント調整で短時間のうちに改善する前歯でも噛める入れ歯研究会。このように、一見するとまったく異なるアプローチを行う各グループであるが、それぞれのルートは違えども患者のQOL向上のための歯科医療を実践していることが理解できる1日となった。以下に、各演題の概要を示す。
1）「目指すべきはリラックスポジション（RP）」（富山明尚氏、福岡県開業）
本演題では、「咬合療法研究会九州支部」副支部長を務める富山氏が登壇。リラックスポジションの定義や咬合療法の目標、そして咬合療法の「3つの手札」として生活習慣の改善、スプリント、および数歯の咬合調整が挙げられることを示したうえで、実際の臨床例を3例供覧。下顎位のずれを是正し、演題にも示されているリラックスポジションを得るためのアプローチとして、資料採得や模型分析、さらに各種スプリントの選択と活用などを経て、治癒へと至った過程を示した。
2）「治癒能と個体差を考えた臨床」（亀山秀和氏、鹿児島県開業）
本演題では、JACD、咬合療法研究会九州支部の双方に所属する亀山氏が登壇。筒井昌秀氏（故人、筒井塾・JACD主宰）と筒井照子氏が提唱する「包括歯科診療」のコンセプトの紹介や、それをふまえた患者をライフサイクルで捉えることの重要性について述べたうえで、1症例を供覧。下顎左側第二大臼歯のう蝕治療を希望して来院した患者に対し、筒井照子氏が提唱する「SMC分類」（骨格〔Skeletal〕、筋肉〔Muscle〕、咀嚼運動〔Chewing cycle〕）などを基に診断を行い、炎症と力のコントロールや患者の個体差を意識しながら患者の治癒能を最大限に引き出す治療過程について示した。
3）「歯周組織再生療法 ～押さえておきたい５つのポイント～」（樋口氏、福岡県開業）
本演題では、JACDの会長を務める樋口氏が登壇。歯周組織再生療法のルーツから最新のトピックに至るまでの歴史や、歯周組織の再生に必要な歯根膜、血餅、成長因子、フラップデザイン、およびデブライドメントの5つの要素に関し、多数の文献やみずからの海外研修の経験、さらには大学院での研究内容をふまえて詳説した。そのうえで2症例を供覧し、血餅が安定することの重要性や、それ以前の基本手技の習得、さらにメインテナンスの重要性についても強調した。
4）「高齢者に噛める喜びを！ 超高齢社会における『医科・歯科・介護』連携とは」（河原氏、前歯でも噛める入れ歯研究会会員8名〔後述〕）
本演題ではまず、前歯でも噛める入れ歯研究会主宰の河原氏が登壇。1968年に福岡県内の繁華街で開業し、還暦を機に2002年大分県佐伯市にて移転開業した後、多くの高齢者が噛めない義歯を仕方なく使用している現状を知ったという河原氏。それをふまえ、患者が使用中の義歯をリマウントして咬合調整し、バランスドオクルージョンを付与して噛めるようにする技法を開発した経緯の紹介や、その後要介護高齢者の自立支援の第一人者である竹内孝仁氏（国際医療福祉大大学院）と出会ったことによる本技法の広がりや医科・歯科・介護の連携に対する貢献、さらには国民に対し歯科の重要性をいっそう訴えかけることの重要性などについて示した後、同研究会のメンバーがリレー方式で続々登壇。湯川博之氏（歯科ゆがわクリニック〔福岡県〕）、本城孝浩氏（本城歯科医院〔福岡県〕）、高森亜矢子氏（高森歯科医院〔佐賀県〕）、奥田恵司氏（大歯大）、田中由利子氏（フリーランス歯科衛生士／歯科技工士）、今井美恵氏（たたらリハビリテーション病院・歯科〔福岡県〕）、吹譯景子氏（ふきわけファミリア歯科〔福岡県〕）、鄭 繼祥氏（九大歯学部大学院歯学府インプラント・義歯補綴分野）の8名が、同研究会で学んだ技法を活かした症例をそれぞれの立場や視点から供覧した。
