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2023年6月9日

The 26th International Symposium on Ceramic開催

「Simplicity Meets Esthetics」をテーマに

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 さる6月9日(金)から11日(日)までの3日間、Town and Country Resort(米国・カリフォルニア州サンディエゴ)において、The 26th International Symposium on Ceramic(Quintessence International Publishing Group主催)が開催された。

 今回で26回目を数える本シンポジウムは、毎回、修復・補綴治療、歯科技工の各分野で世界的に著名な歯科医師・歯科技工士が講演を行うことで知られている。今回は、「Simplicity Meets Esthetics」(シンプルさとエステティックの融合)をテーマに、プログラムチェアマンとしてIrena Sailer氏(ジュネーブ大)とVincent Fehmer氏(歯科技工士、ジュネーブ大)を迎え、初日に9演題、2日目に9演題、そして3日目に7演題の合計25演題(いずれも座長による挨拶や演者紹介、ディスカッションを除く)が行われた。また、各日ごとにも以下のテーマが設定されている。

1日目:Exploring the Digital Link from Diagnostic Planning to Finalization(診断プランニングから仕上げまでのデジタルリンクを探る)
2日目:Advancements in Digital Dentistry: Materials, Techniques, and Challenges(デジタルデンティストリーの進歩:材料、技術、そして挑戦)
3日目:Innovations in Restorative Materials and Techniques(修復材料と技法の革新)

 以下に、各日の演題の概要を示す。

【1日目】
(1)「Integrating Digital Design and 3D Printing Technology for Previsualization of the Esthetic Outcome in Full-Mouth Rehabilitation」Anabell E. Bologna氏(ベネズエラセントラル大)
 歯科医師と歯科技工士のダブルライセンスをもつ演者は、治療前のビジュアライゼーションが重要であるとの趣旨から「palatal-occlusal mockup」の活用について提示。これを用いて治療前に咬合平面や咬合高径を決定した後、オクルーザルベニアやサンドイッチベニアを製作・装着した咬合再構成症例について示した。

(2)「Bottlenecks in Digital Dentistry」Eric Van Dooren氏(ベルギー開業)
 本演題では、スマイルデザインのデータやDICOMデータ、およびSTLデータを一元化して活用することの有用性、また歯科用コーンビームCT画像を基にした補綴装置のエマージェンスプロファイルの決定法、またデジタル技術を活かした「Interdisciplinary esthetic dentistry」のコンセプトなどについて示された。

(3)「Zircomania: Full-Arch Zirconia Rehabilitations」Wael Att氏(米国・タフツ大)
 本演題では、デジタルデンティストリーの3要素としてデータの収集、処理、補綴装置の製作を挙げてそれぞれ解説。また、演題にあるようなフルアーチのインプラント症例をIOSでスキャンするための方法として、Nexus iOS スキャンシステム(Nexus iOS、京セラ)を紹介。そのうえで、バー支持型のインプラント上部構造装着までの過程などを示した。

(4)「3D Ceramic Printing」Marta Revilla Léon氏(歯科技工士、Kois Center)
 本演題では、ジルコニアあるいは二ケイ酸リチウムを用いた3Dプリンティングについて、各種プリンターの方式や用いられる材料の性状、また材料を硬化させるための光線の散乱や吸収、屈折のコントロール、また内部空洞の防止などが重要であるとしたうえで、適切なセラミック3Dプリントのための方法は目下開発中であるとした。

(5)「Battle of the Titans: Lithium Disilicate vs Zirconia」Lee Culp氏(歯科技工士、Sculpture Studios)
 歯科技工士である演者は、CAD/CAMシステムにおいて初期のセラミックブロックから使用してきた経験をもち、その経験をふまえた現在のワークフローを紹介。PMMA材料を用いたプロビジョナルレストレーションにはじまり、ジルコニアおよび二ケイ酸リチウム材料を用いた補綴装置の製作、またインプラントのためのサージカルガイドの製作などについて示した。

(6)「Mucogingival Rotational Tooth Preparation in the Management of Soft Tissues in Fixed Prostheses: Where Is the limit?」Ivan Conteras Molina氏(メキシコ開業)
 本演題では、ジンジバルフェノタイプに応じた歯肉のマネジメント、ホリゾンタルプレパレーションとバーチカルプレパレーションの比較、およびバーチカルプレパレーションの優位性などについて示された。

(7)「Esthetic Full-Mouth Rehabilitations: 40-Year Experience and Perspective」Gerard J. Chiche氏(米国・ルイジアナ州立大)
 本演題では、重要な審美的要素、咬合高径の設定、歯のたわみのコントロール、および各種セラミックシステムの物性について概説。正面から顔貌を見る際の注意点や、安全といえる咬合挙上の範囲など、審美歯科治療における長い経験を基にした臨床的知識を多数示した。

(8)「Decoding Color Matching in Single- Tooth Restorations」Stephen J. Chu氏(米国開業)、Adam J. Mieleszko氏(歯科技工士、米国)
 本演題では補綴・修復装置における色調表現につき、マテリアルの種類、厚み、および光源による見えかたの違いなどについて示したうえで、変色している支台歯に対する対応について解説。3Y、4Y、5Yそれぞれのジルコニアによる結果や、高度な変色歯やインプラント支台の場合にはメタルセラミックスの時代の知識を活かした支台歯色の遮蔽が必要であることなどを示した。

(9)「Digital Workflow for Full-Arch Rehabilitation」Effie Habsha氏(米国・ロチェスター大メディカルセンターイーストマン口腔保健研究所歯学科)
 本演題では、歯科におけるデジタルテクノロジーの概況、有歯顎者に対するデジタルワークフロー、外科処置におけるデジタルワークフロー、そして無歯顎者に対するデジタルワークフローの4点をトピックに解説。デジタル技術を活かしたバーチャル患者における外科処置のプランニングや、インプラント支持によるフルマウスリコンストラクションの過程などが示された。

【2日目】
(1)「The Opacious Area: The Baseline for a Lifelike Restoration」Edwin Zanabria氏(スペイン開業)
 ペルーにて歯科技工士としてのトレーニングを受け、現在ではスペイン在住の演者。本演題では中切歯の不透明度に着目し、デジタルツールと口腔内写真を用いた観察法、それをふまえた各種状況に応じた陶材築盛のステップなどをていねいに解説した。

(2)「Calibrating Visions: A Perpetual Endeavor Between Technicians and Clinicians」Ricardo Mitrani氏(米国・ワシントン大)、Domenico Cascione氏(歯科技工士、OPERART)
 本演題では、審美修復治療の要素として色調、カントゥア、歯冠部の排列、歯根の位置の4点を挙げたうえで、それぞれについて解説。それをふまえ、デジタル技術を活かした顔貌分析やプロトタイプの製作ワークフローなどが示された。また、とくに歯科技工士のCascione氏からは微細な表面性状の付与やステインテクニックも示された。

(3)「Restorative Materials for Full-Arch Implant Rehabilitations」German O. Gallucci氏(米国・ハーバード大)
 本演題では、フルアーチインプラント補綴の成否にかかわる因子、なかでも上部構造の材質による影響について詳説。そのうえでまとめとして、無歯顎患者におけるインプラント固定性補綴装置に関連するもっとも一般的な合併症は、インプラント体、フレームワーク、義歯の破断、摩耗、前装材料のチッピングであり、新しい補綴材料に関する今後の研究が必要であるとした。

(4)「The New Generation of Ceramics as Restorative Materials」Yu Zhang氏(米国・ペンシルベニア大)
 本演題では、大学人の立場から最近のセラミック材料について詳説。ジルコニアの透光性の向上やマルチレイヤー化、二ケイ酸リチウムに代表されるリシア系セラミックスの分類、切削用バーの粒度が強度に与える影響、そして最近話題となっているジルコニアのスピードシンタリングなどについて解説。スピードシンタリングに関しては、通法によるシンタリングと比較して透明度が低下し、多孔性となることを示した。

(5)「Esthetics in the Age of Monolithic Restorations」Don Cornell氏(歯科技工士、米国)
 本演題ではまず、初期の不透明なジルコニアから現在に至るまでの進化について概観したうえで、ジルコニアの表層にわずかにレイヤリングするポーセレン材料「MIYO」(Jensen Dental、日本国内未発売)の使用法について詳説。本材料を用いることで、ジルコニアをモノリシックな状態で使用しつつ、歯冠部や歯肉部に豊かなキャラクタライズが行えることを示した。

(6)「Challenges in Digital Workflow: Minimally Invasive Digital Dentistry and Micro Precision」大河雅之氏(東京都開業)
 本演題では、極薄のラミネートベニアをIOSとCAD/CAMを用いて製作する際の支台歯形成のポイントや、IOSで隣接面をスキャンする際の幅の限界、およびこれらの知見を生かし、正中離開などを主訴とした症例に対しデジタル技術を駆使しラミネートベニアを製作・装着した臨床例などについて示された。

(7)「An Advanced Perspective on Lithium Disilicate Restorations in the Age of Zirconia」Kenneth A. Malament氏(米国・タフツ大)
 本演題では、二ケイ酸リチウムの利点について多くの角度から解説。対合歯の摩耗性、金合金と比較したサバイバルレート、従来型のキャスタブルセラミックスと比較したサバイバルレート、部分被覆と全部被覆を比較した場合でも大差ないサバイバルレートなど、各種論文を引用しながら述べたうえで、「われわれの能力を発揮するのは、われわれ自身ではなく、われわれの選択である」と締めくくった。

(8)「Digital Interdisciplinary Treatments in the Esthetic Zone」Gustavo Giordani氏、Victor Clavijo氏(ともにブラジル開業)
 本演題では、インプラント埋入が計画された症例に対する抜歯前の検査・診断および処置についてまず示され、その後ガミースマイルをもつ患者に対する矯正歯科治療を含めた総合的な治療を行った症例が示された。また演者らが「Replicad」と称する、CAD/CAMを用いた歯肉形態の複製法についても紹介された。

(9)「Successful Soft Tissue Management: From Literature to Clinical Aspects」Martina Stefanini氏(イタリア・ボローニャ大)
 本演題では、補綴治療にまつわる軟組織のマネジメントについて、外科処置以前に歯冠部の組織を増大させておくこと、増大させた組織のスキャロップ形態を回復させるための調製法、アングルドアバットメントによる角度の補正法、およびインプラント埋入直後の辺縁歯肉のサポートの重要性、などについて示された。

【3日目】
(1)「Contemporary CAD/CAM Glass-Ceramic Restorative Materials for Natural Esthetics」Anvita Maharishi氏、(米国・アイオワ大学)
 本演題では、各種ガラスセラミック材料の強度や光透過性について比較したうえで、二ケイ酸リチウム材料の中ではIPS e.max CAD(Ivoclar Vivadent)光透過性が高いことや、VITA VITA SUPRINITY PC(VITA Zahnfabrik)の曲げ強さが強いことを示し、それぞれの使いこなしについて紹介。また、微細な表面性状の付与法など、審美的な仕上がりのためのポイントも示した。

(2)「Factors Related to the Success and Survival of Ceramic Restorations in Modern Dentistry」Mirela Feraru氏(イスラエル勤務)、Giuseppe Romeo氏(歯科技工士、Oral design center in Turin)
 本演題では、現代の歯科は接着技術とMIが大きなポイントとなること、またMIは精密かつ強固であることを示したうえで、症例を供覧しつつラミネートベニアの長期予後およびそこに至るまでの種々の条件について示した。またラミネートベニアのみならず接着性ブリッジやインプラント補綴、また天然歯支台の場合に関しても、長期予後を得るための条件について解説された。

(3)「Clinical and Science-Based Elements of Lithium Disilicate and Zirconia Restorations—What Every Clinician Must Know!」Taiseer Sulaiman氏(米国・ノースカロライナ大)
 本演題では、二ケイ酸リチウムとジルコニア材料の選択に影響を与える要素として、光透過性、接着材料や前処置の違い、天然歯との物性の違い、接着後の物性の違いなどについてさまざまな視点から解説。さらに、それぞれの接着の手順や各種クリーナーの使用法、材質ごとに適した接着時の光照射の秒数など、臨床家にとって役立つ知識が多数披露された。

(4)「Prosthodontic Protocols for the Modern Dental Team: Navigating the Prosthodontics Restorative Landscape」Joshua Polansky氏(歯科技工士、Niche Dental Studio)
 本演題では、「Just say no to hand wax up」をキーワードに、歯科技工のデジタルワークフローについて解説。単なる模型上でのワックスアップを行うのではなく、デジタル技術を生かして顔貌とともにワックスアップを行うこと、また歯冠形態のライブラリーを活用した歯冠形態のデザインなど、最先端の技工スタイルを示した。

(5)「Predictable Integration Between Esthetics and Occlusion」Diego Bechelli氏(アルゼンチン開業)
 本演題では、演題のとおり咬合と審美の融合、また接着歯学を活かした咬合崩壊ケースのリカバリーについて解説。「口腔内の失われた情報を取り戻すこと」をコンセプトに、検査・診断・治療計画を経て接着を活かした低侵襲なフルマウスリコンストラクションを行う過程を示した。

(6)「Tooth Strength and Esthetics— It’s Complicated」Van P. Thompson氏(イギリス・ロンドン大キングスカレッジ)
 本演題では、天然歯への理解を深めるための歯の組織学について詳説。多数の文献や電子顕微鏡写真を用い、歯の微細構造やその特徴、光透過性やセラミック材料との物性の比較について示した。

(7)「Technique and Material Selection for the Anterior Esthetic Zone」Galip Gürel氏(トルコ開業)、Hilal Kuday氏(歯科技工士、トルコ)
 本講演では、歯科医師と歯科技工士によるチームワークのもとで行う前歯部審美修復について詳説。口腔内でのダイレクトモックアップや、デンティン部とエナメル部の2層構造で製作するプレスセラミックス、またラミネートベニアの内面に微細な周波条を付与して深みのある質感を表現する方法など、デジタル・アナログ両面にわたりさまざまな審美修復のためのテクニックを示した。

 会期中はあいにくの曇り空、時折小雨も降る陽気であったが、会場では世界各国からの演者が最新のトピックやテクニックを次々に提示する盛会となった。また、企業展示およびレセプションパーティーも併せて盛況となっていた。