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2009年4月19日

QDT購読キャンペーン講演会「いまさら聞けない補綴治療」(第8回・金沢会場)開催

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 さる4月19日(日)、石川県地場産業振興センター(石川県)において「QDT購読キャンペーン講演会 いまさら聞けない補綴治療」(第8回・金沢会場)が開催された(クインテッセンス出版主催)。昨年5月以来、「補綴雑誌」としての「QDT」の周知を図るために全国各地を巡回してきた本会もついに最終回。会場には多数の地元歯科医師が来場し、盛況となった。以下に、各演題の概略を示す。

(1)「若い歯科医師に伝えたい補綴治療の意義」(船登彰芳氏、石川県開業)

 本講演で船登氏はまず、「歯科医師と医師との違いは、補綴治療を通じた『再生治療』に携わることができるか否かにある」とし、歯科医師が補綴治療を行えることの意義を強調。
 その後、昨今のインプラント治療の急激な普及への警鐘として「術者はインプラント治療を行う前に、本当にそれだけの本数が必要なのか考える必要がある」「歯内療法や歯周補綴によって残すことのできる歯を、安易にインプラントに置き換えてしまってよいのか」というメッセージを投げかけたうえで、自らが若き日に総義歯に関する学習を熱心に行ったエピソードを披露。そして、「補綴治療のすべての基本は総義歯を知ることにある。そこからクラウン・ブリッジやインプラントに進まなければ、確実な治療は行えない」「インプラント治療を行うにしても、1本の天然歯の印象採得や支台歯形成にこだわりをもてるようになってから進んでほしい」など、基本に忠実な学びが若手歯科医師にとって重要であることを聴講者に訴えかけた。

(2)「実践! 若手歯科医師のための歯冠修復マニュアル まずはここから 特別編:いまさら人に聞けない咬合採得・咬合調整」(萩原芳幸氏、日大歯学部歯科補綴学教室3講座准教授)

 本講演で萩原氏はまず、咬頭嵌合位の定義と咬頭嵌合位における咬合採得について詳説。各種咬合採得材料の特徴や、具体的な使用法について多数のスライドとともに示した。また、中心位の定義や中心位への誘導方法、そのためのジグの製作・使用法、さらに目的とする顎位を得るための咬合調整法についてもステップを追いながら示した。

 そして締めくくりとして、五十嵐孝義氏(故人、日大歯学部元教授)による補綴治療の大原則、
「(1)最終補綴装置のイメージが浮かばないうちに治療に着手してはならない」「(2)やり直し・リカバリーの可能な補綴デザインを考えなければならない」「(3)補綴装置の長期サービスには咬合の要素がもっとも重要である」を提示し、若手歯科医師へのメッセージとした。

(3)「下顎総義歯の吸着メカニズム」(阿部二郎氏、東京都開業)

 本講演で阿部氏はまず、氏が提唱する下顎総義歯の吸着メカニズムが大学教育における「下顎義歯の安定」とは異なることを強調。下顎総義歯も上顎総義歯と同様、すべての辺縁の封鎖が得られれば吸着が可能であるとしたうえで、そのメカニズムと実際を解説した。下顎総義歯の各部位における辺縁封鎖機構の解説にはじまり、それを生かすための個人トレーの外型線描記や顎間関係記録、そして精密印象採得に至る過程には氏独自の理論が満載されており、会場では熱心にメモをとる参加者の姿がみられた。また、氏はこれらの理論を歯科技工士と共有することの重要性にも言及した。

(4)「ベーシックインプラント修復 ―治療計画から最終補綴まで―」(南 昌宏氏、大阪府開業)

 本講演で南氏はまず、自らがインプラント治療に携わるようになった経緯について述べ、「1993年ごろからインプラント治療に取り組みはじめたが、補綴主導型の概念が導入される以前と以後ではその方針がまったく変わっている」とした。そのうえで、補綴主導型のインプラント治療に必要な知識について順次解説。インプラント体-アバットメント間の連結様式や、上部構造の固定方式(セメントリテイン、スクリューリテイン)における個々の注意点、そして既製アバットメントと天然歯が隣接する際の注意点など、通常の論文や講演では聞く機会の少ない基礎知識について存分に語った。

 なお、全日程終了後には「補綴治療の内幕を探る」と題したディスカッションも催され、演者らの学びの過程や昨今の情報過多時代に考えるべきことなどが語られた。