2025年7月号掲載
【特別寄稿】AI活用が加速させる歯科の未来予想図 ~歯科におけるAIの現在地と今後の動向~ 前編:AI 技術の全体像と歯科領域への浸透
※本記事は、「新聞クイント 2025年7月号」より抜粋して掲載。
注目を集めるAI とはデジタルテクノロジーの変遷
近年、少子高齢化や人手不足を背景に、医療を含む多くの分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)化が加速しています。政府が提唱するSociety5.0 は、サイバー空間とフィジカル空間(現実社会)を高度に融合させた超スマート社会の実現を目指す構想であり、その実現に向けて、AIは基盤技術として注目されています。DX 化の波は当然、歯科にも押し寄せています。なかでもAI を活用した診断支援やデータ解析の導入は急速に進んでおり、とても身近な存在になっていることがおわかりいただけると思います。
AI(人工知能)という言葉が誕生した歴史は意外と古く、今から約70 年前にさかのぼります。米国で開かれた研究会議の場で「人と同じように考える知的なコンピューター」をAI としました。この意味では、現在においてもAI はいまだ実現していないこととなります。なお、現在では「人間の知能に近づけた人工的な知能、機能、技術」をAI とよぶことが多いです。
AI は時代ごとに定義を変えてきました。第1 次・第2 次AI ブーム(1950〜80 年代)では「もし〜なら」と人間が定めた手順に従って情報を処理するルールベース型が中心でした。しかし、第3次AI ブームでは、膨大なデータと計算量から情報処理の手順をみずから作り出すニューラルネットワーク型の発展が特徴的です(図1)。
ニューラルネットワークは機械学習の1 つの手法で、生物の神経細胞(ニューロン)が行う情報伝達のメカニズムを模倣するところから始まりました。現在、このニューラルネットワークを多層化したディープラーニングは、画像認識や自然翻訳、自動運転といった情報処理で卓越した性能を発揮しています。
また近年、医療分野への応用で注目されているのが説明可能なAI(Explainable AI、XAI)です(図2)。これはAI がどのような根拠で結果を導いたのかを、人間が理解できるように説明する技術の総称です。たとえばAI があるX 線画像を処理し病変を明示した場合、なぜそう判断したのかを説明することで、医療者側はより説得力のある治療説明を患者さんに提供でき、ひいては患者さんとのラポール形成につながると期待されています。