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2026年5月号掲載

中医協委員を務める 日本歯科医師会常務理事

※本記事は、「新聞クイント 2026年5月号」より抜粋して掲載。

地域における歯科医療提供体制を守るための新たなスタートに

令和8年度診療報酬改定の動向が注目されるなか、「今回の改定は新たなスタートである」と語るのは、日本歯科医師会(以下、日歯)の社会保険担当常務理事であり中央社会保険医療協議会委員を務める大杉和司氏。その真意とは――。本欄では、大杉氏に今回の改定のポイントと先を見据えた歯科界の方向性についてうかがった。

大杉:今回の改定について、日歯と日本歯科医師連盟の見解でお示ししたとおり、本体改定率は+3.09%とされたものの、物価・賃金への紐づけが多く歯科への真水の配分は+0.31%にとどまっています。限られた財源の中において一定の財源確保は評価できますが、物価高騰や人件費上昇への対応としてはけっして十分ではなく、歯科医療機関の経営環境は依然として厳しい状況にあります。

 まず物価高騰への対応として、歯科の初・再診料の見直しと歯科外来物価対応料が新設されました。賃上げについては、現行の歯科外来・在宅ベースアップ評価料の都道府県の届出状況を見ると昨年12月時点では平均36.5%であり、特に年配の会員の歯科医療機関の届出が低い都道府県が見られます。事務手続きはだいぶ簡素化されてきており、「歯科はベースアップが必要ない」と誤解されないように、将来世代のためにもぜひとも届出をお願いいたします。

 次にかかりつけ歯科医による口腔機能管理の充実です。口腔機能発達不全症や口腔機能低下症への対応として、歯科衛生士による口腔機能実地指導料が新設されました。また歯科技工士連携加算では、対象補綴装置の拡充が行われましたので、歯科医師と歯科技工士のさらなる連携推進に期待したいと思います。

 また、昨今の歯科用貴金属を取り巻く状況も鑑み、CAD/CAM冠・インレーの適応拡大をはじめ光学印象といったデジタル化の拡充による条件の見直しや評価の引き上げに脱金属の方向性が示されたといえます。

 さらに、入院患者の口腔管理における医科歯科連携の推進として、医科連携訪問加算が新設されましたが、医科側にも歯科との連携に関する評価が新設されたことは画期的です。今後はかかりつけ歯科医として、来院が困難な患者さん側に出向くという発想の転換が必要となるでしょう。

 その他、歯科固有技術の再評価として根管治療における要件の見直しや口腔粘膜湿潤度検査の新設、歯科麻酔に関する評価の新設、歯科口腔リハビリテーション料2の見直しなど、口腔健康管理のさらなる充実に資する内容が評価されました。今後、発出される疑義解釈等も含めて、6月からの実施に向けて会員が臨床現場で混乱を招かないような説明や対応を目指したいと思います。

 高市政権が掲げている「攻めの予防医療」に貢献するために、全身疾患との関連性や口腔機能低下などの領域に積極的に取り組むことが求められます。今回の改定は、地域における歯科医療提供体制を守るための新たなスタートと考えています。