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2022年7月号掲載

国民皆歯科健診制度の光と影

 6月1日に「国民皆歯科健診義務化へ?」という報道が突如として流れた。この報道にいちばん驚いたのは国民ではないだろうか。日本人の歯科とのかかわりは、痛くなってから歯科医院を訪れるというパターンが圧倒的である。痛くなくても歯科医院に行かねばならないことになりそうな「義務化?」という投げかけをどう受け止めただろうか。

 「検診」でなく「健診」であるならば病気になる前から歯科を受診し、病気のあるなしだけでなく歯科疾患へのリスクファクターの探索も行い、予防的指導を行う制度になる可能性が高い。う蝕や歯周病は、予防が効果的な病変であるので健診の意義は高く、国民の健康増進に貢献するのは論を待たない。また、リスクファクターの探索となると唾液検査が活用されることは確実であり、唾液検査の一般化により新たな検査市場の創出にも期待が膨らむ。一方で、唾液を総合的に取り扱う学会がないことは、唾液の科学が未成熟であることを示しており、上滑りを危惧する。

 これまで「削って・詰める」のが歯科医療という、多くの国民がもつ従来のイメージを大きく変え、歯科への受診行動に対する大転換点となる「国民皆歯科健診」の実現に期待しつつ、その成功のカギは、国民の歯科健診への十分な理解ではないだろうか。特に口腔の健康が全身の健康にもつながることの周知は不十分である。関係者すべてが国民を巻き込み、むしろ歯科健診が国民からの要望となるように認知度を高める努力が求められる。

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