2026年5月号掲載
3Dプリント義歯、新時代の幕開けへ
※本記事は、「新聞クイント 2026年5月号」より抜粋して掲載。
令和8年度の診療報酬改定で新設された三次元プリント有床義歯への評価は、歯科技工のデジタル化を推進し、保険義歯の供給体制を維持・提供し続けるという国と歯科界との強い思いによって実現した。
歯科技工のデジタル化のメリットは、義歯製作の工程を削減できる点にある。デジタルの活用により、従来のワックスアップや埋没、填入といった工程が多く負担の大きい手作業が自動化され、技工時間の短縮と品質の均質化が可能になる。
特に重視すべきは、義歯製作に関する情報が「データ化」される点である。顎間関係の記録を含むデータが歯科医院に蓄積されることで、義歯の紛失や破損時、転居時あるいは災害時にもデータを基に迅速な再製作が可能だ。また、短期間での口腔機能の回復への対応が求められる病院歯科においても大きな強みとなる。
しかし、現状の三次元プリント有床義歯の技術は、まだ“ボタン1つ”で完成する段階ではなく相応のノウハウが必要であることを忘れてはならない。われわれは従来の加熱重合型義歯床用レジンとはまったく別物であることを認識し、初期段階で生じるトラブルなどを業界全体で共有・蓄積し、改善していく寛容な姿勢が求められる。
歯科技工士不足が叫ばれるなか、三次元プリント有床義歯の評価は新しい時代の幕開けといえる。歯科界の努力によって知識やノウハウの蓄積が進んだその先には、だれもが簡便にそれこそボタン1つで製作できる時代が到来することを期待したい。