2016年2月21日掲載
「歯科補綴学が担う口腔の健康と健康長寿 -明るい超高齢社会の実現」をテーマに
(公社)日本補綴歯科学会主催研究企画推進委員会・学術委員会合同シンポジウム開催

同学会では、国民の健康長寿にどのように歯科補綴学が寄与しうるかに関するエビデンスの創出を目的に、大規模コホート研究や多施設臨床疫学研究を積極的に企画推進しており、その一環として、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターとの共同研究「高齢期の歯科口腔・嚥下機能がQOL及び健康余命に及ぼす影響」が2015年度より始まっている。共同研究では、歯科口腔・嚥下機能等と健康余命や余命との関連を調べるために、同学会が縦断研究コホートの過去のデータの提供を受け、解析を進めていくが、本シンポジウムは現時点での知識の集約を行うとともに、研究企画の公募を含めた同学会のかかわり方や活動の方向性の紹介を目的に開催されたもので、演題・演者は以下のとおり。
・「咀嚼能力のバイオマーカーとしての意味を探る-吹田研究より」(小野高裕氏、新潟大教授)
・「口腔機能の維持は介護予防に貢献するか?:SONIC研究より」(池邉一典氏、阪大准教授)
・「福岡8020調査研究のアウトカムと課題」(安細敏弘氏、九歯大教授)
・「疫学調査における歯科の可能性 ~群馬県草津町での調査から~」(新開省二氏、東京都健康長寿医療センター研究所副所長)
・「(公社)日本補綴歯科学会が取り組む国民の健康長寿に寄与する臨床疫学調査の経緯とこれから」(玉置勝司氏、神歯大教授)
小野氏、池邉氏、安細氏は、自身らの研究報告をふまえ、咀嚼能力、咬合力といった口腔機能を維持することの健康長寿における重要性について述べた。新開氏は2002年より群馬県草津町と共同で実施してきた高齢者対象の健康づくりと研究事業について説明。6年前からは歯科・口腔機能の検査も行い、今後同学会とデータを分析し、健康余命との関連性や補綴歯科的介入による高齢者のQOLや健康余命に与えるインパクトなどを調べることの意義を強調した。玉置氏は草津研究における同学会のかかわりを紹介するとともに、学会員による共同研究への応募・参加について期待を寄せた。
本格的な超高齢社会を迎え、健康寿命の延伸が課題とされるなかで、口腔機能の維持が健康長寿に果たす役割を提示していくことは重要であり、今後の活動が注目される。