学会|2024年5月21日掲載

「支えよう!子どもの笑顔と明るい未来 〜歯科から育む心と身体〜」をテーマに

第62回日本小児歯科学会大会が開催される

第62回日本小児歯科学会大会が開催される

 さる5月16日(木)、17日(金)の2日間、横須賀芸術劇場(神奈川県)において、第62回日本小児歯科学会大会(木本茂成大会長、新谷誠康理事長)が開催された。今回の大会は「支えよう!子どもの笑顔と明るい未来 〜歯科から育む心と身体〜」をテーマに、約2,000名の歯科医師・歯科衛生士らが参加し、盛況となった。

 初日は、基調講演として大会長の木本氏(神歯大小児歯科学分野)が登壇。「これからの小児歯科:健康長寿を目指すライフコースアプローチ」と題して講演を行った。1)小児歯科の変遷、2)口腔機能発達不全症保険収載への経緯、3)子どもの運動能力と機能、4)健康長寿を目指すライフコースアプローチの4点について語り、小児歯科はその役割も時代とともに変遷したが、歯科の入り口として早期介入することが大いに有効であるとした。小児期から正しい発達を促す機能と健全歯列の獲得、予防の習慣(ハビリテーション)で口腔機能を健全に保つことはオーラルフレイルを防ぎ、健康長寿につながると強調した。

 続いて教育講演1として樋口 進氏(医師、久里浜医療センター名誉院長・顧問)が登壇した。「子どものネット・ゲーム依存の現状と対応」と題し講演した。氏は歯科医師ではないが、精神科医として国内で初めて専門外来を開設し、種々の依存症の診療経験をもとに小児のネット・ゲーム依存症を切り口に外来での診療の流れとその治療方法や、歯科との関連を紹介した。「依存」の定義、分類を解説したうえで、歯科と関連しうる病態として、ゲームへの過集中により衛生習慣の欠如がみられ、発達障害を併発している場合、治療に協力が得られないこともあるという。そのため、併発症などが重症化する前に予防が重要であるとした。

 午後には、シンポジウム「口腔機能の発達支援―現状と展望―」として以下の3講演が行われ、その後、各シンポジストと座長で講演内容に関する討論が行われた。

「口腔機能の発達と不全」弘中祥司氏(昭和大歯学部口腔衛生学)
「小児の口腔機能の発達に関する現状と問題点」齊藤一誠氏(朝日大歯学部口腔構造機能発育学講座小児歯科学分野)
「地域で取り組む口腔機能発達支援」浜野美幸氏(東京都開業)

 近年は食物をのどに詰まらせて窒息死する子どものニュースが相次ぎ、さらにコロナ禍後の各種調査で小児の運動機能低下傾向とスクリーンタイムの長時間化の傾向が報告されている。各シンポジストからそれぞれの地域や立場での調査、経験からみた小児期の口腔機能や食事自体の問題点と、今後の課題が講演された。また、歯科医師として問題視している点は保護者も同様とは限らず、正確な周知と早期受診を促す必要性が語られた。

 なお、次回、第63回大会は、きたる2025年5月29日(木)、30日(金)の2日間、朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター(新潟県)において、早﨑治明氏(新潟大大学院医歯学総合研究科小児歯科学分野)大会長のもと、開催予定である。

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