学会|2025年9月16日掲載
「デジタルで治療・診断の質を高める」をテーマに
第4回日本デジタル矯正歯科学会学術大会開催
さる9月14日(日)、東京科学大学(東京都)において、第4回日本デジタル矯正歯科学会学術大会(成田信一大会長、三林栄吾理事長)が、「デジタルで治療・診断の質を高める」をテーマに開催された。本会は現地開催とWeb配信のハイブリット形式で行われ、合わせて280名以上の参加者を集めて盛会となった。
まずセッション1では、岡崎好秀氏(国立モンゴル医学科学大学)による「具体的(アナログ)概念と抽象的(デジタル)概念」、浜中 僚氏(米国・Universal Orthodontic Lab、長崎大学)による「アライナー矯正システムの開発過程から見えた課題と対応」が行われた。岡崎氏は歯科保健指導について概説し、患者や保護者への指導時のコツとして「小学3年生にも理解できるよう伝える必要がある」とした。浜中氏は、デジタル矯正分析ソフトウェアを開発する立場から、特にアライナー矯正治療の課題点として、個別化あるいは専門知識を基礎とした治療計画立案が、ソフトウェアのプログラム主導で歯科医師をはじめ誰によってもなされないことすらあること、またどう治すかの戦術のみ語られ、どの症例を手がけるかを診断する戦略の視点が欠落していることを指摘した。また、現在はデジタルであっても矯正歯科治療の診断体系がアナログ資料を前提に確立されていることから、今後は3Dシミュレーションを軸とした新しい診断プロセスを構築する必要性があると述べた。
次の共催セッションでは、韓国デジタル矯正歯科学会からCheol-Ho Paik氏(韓国開業)が「Hybrid Orthodontics: Merging Conventional Mechanics with Digital Aligner Strategies」、日本デジタル歯科学会から木本克彦氏(神奈川歯科大学)が「デジタル歯科治療の変遷と今後の展望」と題して講演した。Paik氏は、固定式装置や急速拡大装置との併用アプローチにより、アライナー単独では対応が難しい骨格性Ⅲ級不正咬合や歯周病を有する過蓋咬合を効果的に改善した症例を供覧した。木本氏は、矯正歯科に限らない歯科全体のデジタル化の変遷について解説し、CAD/CAMシステム、口腔内スキャナーなどの代表的デジタル歯科機器の展開、および今後の三次元化やビッグデータ、AIの活用といった展望にもふれた。
午後のセッション2は、綿引淳一氏(東京都開業)が「包括的矯正治療における診査・診断・治療計画とAIの活用」で自身が手がける包括的矯正治療のためのAI支援システムの開発について、髙井基普氏(東京都開業)が「ADVENTURES:デジタル矯正とデジタル補綴の融合」で包括的歯科治療における落とし穴とそれをカバーするデジタル技術の活用について、宇野澤元春氏(歯科医師、株式会社Dental Prediction代表取締役)が「歯科へのXR技術の応用」で先端技術によるトレーニングツールの開発について紹介した。
続くセッション3では、山内健介氏(東北大学)が「デジタル技術の応用による顎変形症治療の新機軸」でナビゲーション手術システムや遠隔医療システムの臨床導入について解説し、また大会長の成田氏(東京都開業)が「JETsystem × デジタル診断:最短7か月治療を可能にした次世代矯正」で、自身が手がける短期間型治療法および最新のデジタル診断ソフトウェアの活用について紹介した。デジタル技術が、矯正歯科治療の質の向上にどのように貢献できるか、また包括的歯科治療における活用や医科・歯科連携における展望など、多角的な議論が行われた大会であった。
なお、次回の第5回日本デジタル矯正歯科学会学術大会は、きたる2026年9月6日(日)に名古屋において開催予定である。