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社会|2025年10月15日掲載

クインテッセンス出版株式会社、第79回WEBINARを開催

辺見浩一氏が「深在性う蝕に対するVital Pulp Therapyを成功に導くために」をテーマにWeb講演

辺見浩一氏が「深在性う蝕に対するVital Pulp Therapyを成功に導くために」をテーマにWeb講演

 さる10月9日(木)、辺見浩一氏(東京都開業)によるWEBINAR #79「深在性う蝕に対するVital Pulp Therapyを成功に導くために」(クインテッセンス出版主催、北峯康充代表取締役社長)が開催された。本セミナーは、演者の著書『深在性う蝕に対するVital Pulp Therapy』の内容をベースに行われた。

 まず辺見氏は、昨今では米国、ヨーロッパ、日本でVPT(Vital Pulp Therapy;生活歯髄療法)に関するポジションステートメントおよび診療ガイドラインが策定され、根拠に基づく治療として少しずつ整いつつあることを説明した。しかし、それでもまだあいまいで根拠に乏しい治療であることに変わりはなく、特に“深在性う蝕”は当たり前に遭遇するが、その治療選択に頭を悩ませる病態であると述べた。

 そのなかで辺見氏はつねに考えてきた“ディシジョンメイキング”いついてふれた。あいまいな治療だからこそ、みずからの判断で最良の治療が選択できるように心がけることを大事にし、著書でも掲載してある“深在性う蝕における治療選択のディシジョンツリー”を紹介した。またそれを基にした5つのフェーズについて解説を行った。

 フェーズ1“歯髄の診断”では、まずは患者情報の収集、歯髄の生死の判定、起きている炎症の程度を確認して診断を行うと述べた。ただし、歯髄炎はシームレスな病態であり、可逆性歯髄炎と不可逆性歯髄炎を明確に分けることはできないため、多くの情報や所見を集め、そこに歯髄の経歴を加味して判断することが大切だと話した。また、判断が難しい病態だからこそ、ていねいに患者説明を行い、しっかり理解してもらうことで患者との信頼関係が構築できると語った。

 フェーズ2“う蝕除去の選択”では、選択的う蝕除去または非選択的う蝕除去のどちらかを選択することになるが、どちらを選択する場合でもう蝕除去完了には基準が必要であり、従来から提示されてきたう蝕検知液とう蝕の硬さに加えて、歯髄の状態を基準として考えることを提案した。

 フェーズ3“ステップワイズエキスカベーション”では、AAE(米国歯内療法学会)とESE(ヨーロッパ歯内療法学会)の治療選択における意見の相違について言及し、その相違によって少なからず臨床現場での混乱が生じているが、メリット、デメリットの双方を考えて選択していくことが大事だと話し、自身の選択基準について解説を行った。

 フェーズ4“深在性う蝕への断髄の有効性”では、直接覆髄と断髄を俎上に挙げて解説した。文献を通して断髄の有効性を述べたうえで、歯髄を十分に観察して判断することの重要性を説明した。

 フェーズ5 “症候性不可逆性歯髄炎への対応”では、歯頚部断髄と抜髄について解説を行った。歯頚部断髄は昨今高い成功率が報告されており、適応症が拡大しているが、同時に歯髄感受性試験の信頼性低下というリスクも孕んでいるため、「抜髄よりも簡単だから歯髄保存治療を選択する」という消極的な考えの下で治療選択を行う危険性について警鐘を鳴らした。

 最後に、歯髄を保存する価値をいま一度考え、深在性う蝕に対するVPTを行うにあたって辺見氏が必要と考えている7つのポイント(著書掲載)について話し、本講演を締めた。講演後の質疑も多く寄せられ、VPTの注目度の高さが窺えたとともに、辺見氏の歯科治療に対する真摯な気持ちが十分に伝わる講演および質疑応答となっていた。

 本講演の振り返り配信は、2026年1月9日(金)まで新規購入が可能である。なお、次回のWEBINAR #80は、きたる11月13日(木)、月星太介氏(愛知県開業)を招聘し、「根管治療トラブルシューティング ~ここで差がつく根管治療~」と題して講演予定。今回の振り返り配信、次回WEBINARのお申し込みはいずれもこちらから。

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